2013 Fiscal Year Annual Research Report
認知症の周辺症状(BPSD)による精神病床入院から地域移行への看護ケアモデル開発
Project/Area Number |
24660059
|
Research Institution | St. Luke's College of Nursing |
Principal Investigator |
萱間 真美 聖路加国際大学, 看護学部, 教授 (60233988)
|
Keywords | 認知症 / 早期退院 / 家族ケア / チーム医療 |
Research Abstract |
認知症患者の精神科病床への入院長期化が指摘されている。患者が在宅へ退院するためには家族の支援が不可欠であり、そのための退院調整が必要となる。本研究では、家族に必要な支援を明らかにするため、精神科病院への入院と在宅移行についての主観的体験について、3か月以内に退院した患者と主介護者8組、および、主治医、入院時の担当精神保健福祉士、担当看護師を対象にインタビュー調査を実施した。家族には入院の経緯や具体的に受けたサポート、専門職へは、受け持ちの経緯や具体的なケア内容と目的を質問した。分析はグラウンデッドセオリーアプローチの継続的比較分析を用いた。その結果、精神科病棟から認知症患者を3か月以内に退院させた家族ごとのストーリーと、事例に共通するカテゴリを抽出した。ケースに共通するストーリーには、患者本人が家に帰りたいという意思を示し、かつ「家族が介護によって得る利益」が何らかの形で認められた。ケースによって、介護者となることで経済的に安定するなど利益を自覚しているケースもあれば、妻への罪悪感への自責の念を軽減させるための介護、家族間の葛藤が患者の介護により緩和されるケースなど、利益を自覚していないケースもあった。本研究で見いだされた家族の利益は、介護者自身の満足、介護への高い価値を置く自身への満足感、周囲からの肯定的な評価やサポートを得ることといった先行研究の結果を支持し、さらに、介護者の内的な体験として間接的に介護の継続を支えていただけでなく、物理的および心理的な利益として直接的に介護者自身の生活の円滑な継続に資していた。認知症の在宅介護は、その家族への負担感が注目されてきたが、医療関係者は、家族にもたらされる利益を見抜いた上で、家族がその利益を最大限に享受できるような環境を具体的に作り出すことに専門性を発揮することで、退院を促進することに寄与できることが示唆された。
|