2014 Fiscal Year Annual Research Report
モビリティの影響を網羅的かつ定性的に試験するネットワークシステム性能評価手法
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24680007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
廣森 聡仁 大阪大学, 未来戦略機構, 講師 (90506544)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モビリティ / シミュレーション / 無線ネットワーク / 性能評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,モビリティと歩行者が通行する周りの環境との影響を把握するために,加速度センサとジャイロセンサを搭載した靴から得られる情報に基づき, 人の歩容を詳細に把握し,路面の状況を推定する手法を提案した. 足の動きは路面の傾斜や凹凸など,通路の状況を少なからず反映している.提案手法では,加速度センサとジャイロセンサの計測結果に基づき,足が地面に接していることを検出し,加速度センサからの情報に基づき,センサ自体の傾きから,路面の傾斜を推定するとともに,加速度の分散から路面の安定性を判断する.加速度の分散が小さい場合には,路面の傾斜は一定の値に収まっていることから,安定した路面と判断できる.一方,加速度の分散が大きい場合には,砂利などで構成される不安定な路面と判断できる.さらに,複数の歩行者から路面の傾斜情報を集約し,路面の傾斜の分散から,通路の凹凸の存在を把握する.評価実験においては.提案手法により,高精度に路面の傾斜を認識できること,路面の安定度を判断できることを示した.また,路面の傾斜を複数の歩行者から集約することによって,通路の凹凸の有無を判断できることを示した. 一方,車両の現実的な移動を把握する手法として,信号機に起因する交通渋滞について,赤信号中における車列長の増大と,青信号になり車両が順次発進することによる車列長の減少についてモデル化し,各信号サイクルにおける車列長を推定する手法を提案した.提案手法では,信号への車両の到着はポアソン過程に従うと仮定し,各信号サイクルについて車列長の推定を行う.提案手法の性能を評価するため,交通シミュレータを用いて評価実験を行った.実験では,車両群の一部をプローブカーとして無作為に抽出し,それらの走行軌跡情報をプローブカーデータとして,提案手法により車列長の推定を行った.その結果,誤差数台程度の精度で車列長が推定できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モビリティとネットワークシステム間の関係性だけでなく,実世界のモビリティの特性を把握し,それらに基づきモデルを構築する取組をすすめている.これにより,提案するモビリティモデルの有用性をより向上させるだけでなく,提案手法を利用可能な基盤を開発及び提供することで,ネットワークシステムの性能評価に貢献することが期待でき,当初の計画通り研究が進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,まず,昨年度に考案した並列計算によるモビリティモデル導出アルゴリズムにより,性質の異なる多数のモビリティモデルを導出し,様々なネットワークプロトコルを対象に性能評価を行い,プロトコル毎でネットワーク性能に影響を及ぼすモビリティ特性を明らかにする.さらに,その調査結果を基に,ネットワークを構成するノード数,ネットワークトポロジ,ルーティングプロトコルなど,ネットワーク盛業に関わるパラメータと,モビリティ特性間の相関を評価し,状況に応じた適切なネットワーク制御手法を明らかにする.その後,実用的なアプリケーションの一例として,災害時における情報収集ネットワークを対象とし,提案する性能評価手法により,情報収集時間,ネットワーク全体の維持時間など,相反するネットワーク性能に対し,モビリティが与える影響を定性的に評価し,モビリティによりネットワーク性能を高める方法を検討する. また,街中での歩行者や車両の移動を計測し,提案するモビリティにより実世界のモビリティ特性が再現可能か確認する.まず,多くの歩行者の移動を測定可能な,交差点や地下街などある程度狭い場所を対象とし,レーザレンジセンサや画像解析ソフトなどを活用し,効率的に歩行者の移動軌跡を多数集取する.その結果を基に,歩行者の移動軌跡の再現に欠かせないモビリティ特性を明らかにする.一方,申請者は別の取組において,プローブカーにもとづき広範囲に渡る交通流を推定する手法を考案しており,この知見を基に,都市部における車両の移動を把握することで,車両の移動軌跡の再現に不可欠なモビリティ特性を明らかにする. さらに,ネットワークシミュレータや交通シミュレータ棟,各種シミュレータ上で提案するモビリティモデルを簡単に利用できるようソフトウェア・ライブラリの開発を行い,ネットワークシステムの開発に貢献する.
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Causes of Carryover |
実世界におけるモビリティを計測するために,歩行者にスマートフォンを保持してもらい,その移動軌跡を収集する予定であった.しかしながら,少人数を対象とし,事前の実験を実施したところ,スマートフォンに搭載されている各種センサでは,詳細な移動軌跡が得られなかった.当初,この実験を大規模化する予定であったが,期待していた結果が得られる見込みが少ないため,この実験に関わる人件費及び謝金を使用しなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は,レーザレンジセンサや画像解析ソフトを利用することで,10数人規模の歩行者を対象に正確なモビリティを把握することで,実世界におけるモビリティ特性を把握する.一方,それ以上の規模の歩行者については,ゲーム業界や映画業界で広く使用されている,俳優の演技に基づく人の行動モデルをシミュレーションに導入することにより,効率的に様々な状況化における移動軌跡を収集し,提案するモビリティモデルの基礎データとして活用する.
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Research Products
(6 results)