2012 Fiscal Year Annual Research Report
吃音の流暢性促進プログラム開発:神経科学的理解のセラピー法との融合
Project/Area Number |
24680025
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
|
Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
豊村 暁 東京電機大学, 情報環境学部, 助教 (90421990)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 吃音 / 発話運動制御 / 脳機能計測 / 流暢性促進 |
Research Abstract |
基礎となる吃音発生の神経メカニズムを解明するための研究からスタートした。吃音発生の場面として、他者(特に知り合いではない他者)と対面して話す際は吃音が出やすく、人形や子供と対面して話す際は吃音が出にくいことが知られている。一方、先行研究では、対面する他者という視点に立って吃音の神経メカニズムを検討した研究は少ない。吃音に関連する部位として運動関連領域などが知られているが、吃音が出やすい場面と出にくい場面といった、別の何かしらの環境的・情動的要因が関係する場合に説明がつかない。本研究ではMRI計測時に被験者が他者と擬似的に対面した状態で質疑応答を繰り返す際の脳活動データを取得する方法を確立した。実験後に、主観的不安尺度や日常生活における対人不安尺度等、いくつかの尺度を用いて脳計測データとの関連を調査した。本実験は現在継続中である。 近年世界各地でエビデンスが報告されつつある、幼児期吃音の流暢性改善の支援法であるリッカムプログラムの研究を進めた。本研究では、日本語話者の吃音児に対して本手法により吃音が軽減するかどうかを調べ、日本語話者への適応可能性を検討する。現在継続中ではあるが、改善に個人差が見られるものの、吃頻度や吃音の持続時間の減少が観察され、日本語を母語とする吃音児であってもある程度有効である可能性が示唆された。また、オーストラリアで開催されたシドニー大学主催の講習会に参加した。 成人吃音話者の重症度や、幼児期吃音の進展などに関して、両手指を用いた協調運動課題を行い、そのパフォーマンスから何かしらの予測が出来ないか、という点について調査を行った。例えば指の運動から、その話者の運動特性が分かれば、適切な流暢性促進プログラムの選択・開発等の手がかりになると考えられる。現在実験を継続中である。その他、以前取得した発話練習効果に関するデータについて考察を進め、論文誌に投稿した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに多くのテーマを立ち上げ、進めている。まだ最終的な結果が出るまでには時間がかかるものの、研究を継続しており、一年目としてはおおむね順調であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在進めている研究を引き続き継続していきたいと考えている。MRI計測、リッカムプログラムに関する研究、指運動に関する研究は現在被験者を増やして継続している。また、新たに脳波計を用いた研究を計画している。以上のような脳計測や行動実験などを通じて、吃音者特有の神経メカニズム・行動指標を特定し、またそのタイプを分類しながら効率のよい流暢性改善の方法を見つけたい。世界中には吃音の流暢性改善の方法について、多くの手法が提案されている。それを参考にするために、情報を集約していきたいと考えている。また、吃音の勉強会等を通じて、言語聴覚士や吃音当事者と議論する機会を積極的に作りたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MRIを用いた研究に関しては、実験に必要な音響機材や消耗品、装置使用料などを想定している。リッカムプログラムを用いた研究や指運動課題に関する研究に関しては、音声記録装置等、研究の遂行に必要な機材を購入する。 また、これらのテーマに関連して、研究補助員の雇用費や被験者への謝金も支出する。実験を行う場所が広域に渡るため、実験遂行時や、研究成果の学会発表時、共同研究者との打ち合わせ時等において旅費を支出する。 25年4月に大学を異動したため、既存の装置等の環境が異なった。従って、本研究を遂行するための機材の整備が必要と考えられる。学内の機材についてまだ調べきれていないが,今後研究推進に購入が必要なものを調査して整備したい。また、脳波計用のシールドルームなど、本研究を進める実験室の立ち上げにおいて必要な機材を購入する経費も支出する。
|
Research Products
(6 results)