Research Abstract |
24年度は,以下3点のテーマに取り組んだ。 第一に,顔あるいは声単独に基づく情動認知における文化差を検討するため,日本人およびオランダ人参加者を対象として,表情認知および声情動認知の実験を実施した。自身のこれまでの研究で見出された内集団での視聴覚音声情動認知における声優位性は,声のみ提示における正答率によって説明が可能であった。しかし,オランダ人と比較した場合の日本人における声優位性は,顔ないし声の単独提示での正答率によっては説明できなかった。ただし,同実験では喜びと怒りの2肢強制選択であり,これら正負の典型的情動を識別する限りにおいては,文化差が検出されなかった可能性がある。そこで,識別する情動の種類を基本6感情すべてに拡大し,声情動認知および顔表情認知の実験を実施した。実験の結果,顔単独での正答率には文化差がみられなかったが,声単独の正答率はオランダ人よりも日本人の方が高いことが示された。つまり,視聴覚音声情動認知の声優位性は,声単独による情動認知の精度によって説明が可能であり,内集団での声優位性と類似性があることが示唆された。 第二に,視聴覚音声情報処理プロセスのさまざまな段階における文化差を検討するため,時間的バインディング(顔と声に微小な時間差をつけて提示し,提示順序を判断させる課題)および音声言語知覚(マガーク効果を利用した音声同定課題)における文化差の検討を開始した。両課題とも,既に刺激の収録と予備実験を完了し,日本人を対象とした実験を完了した。 第三に,視聴覚音声情動認知の文化差を生み出す神経基盤を検討するため,機能的磁気共鳴画像法 (fMRI)を用いた検討を開始した。数度にわたる研究協力者との議論を経て,実験デザインを確定し,実験刺激の作成刺激制御および反応記録用プログラムの準備を終えた。その後,予備実験を開始しており,現在までに画像データの一次的な解析を終えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度に予定していた実験をすべて実施し,10編(うち査読有論文4編)の論文発表と15件の学会発表をおこなった。また,次年度におこなうfMRI装置を用いた研究計画の予備実験も順調に進展している。
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