2013 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロRNA機能推定に向けたネットワーク解析手法の開発
Project/Area Number |
24680032
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
瀬々 潤 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (40361539)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオインフォマティクス / miRNA / ネットワーク / 多重検定 / データマイニング |
Research Abstract |
短鎖RNA(miRNA)は,タンパク質へと翻訳されない短いRNAであり,他のRNAと相補鎖を形成することで,対象の機能を阻害する.今までのmiRNA研究は機能するmiRNA配列の発見が中心であったが,未だに明確な機能はほとんど分かっていない.近年,次世代シーケンサを利用し,ゲノムワイドにmiRNAが制御する遺伝子を観測する事が可能となった.本研究ではこの情報を利用することでmiRNAの機能を予測する手法を開発する. miRNA解析の困難なところの1つは,1つのmiRNAが複数の遺伝子に対して同時に働くことであり,また,同時に,1つの遺伝子が複数のmiRNAに影響を受けることである.つまり,一つ一つのmiRNAに着目したのでは必ずしもその機能を明らかにすることが出来ず,複数のmiRNAが合わさった機能を調べられない限り,その機能が明らかにならないことである.本研究では,まず,本当に複数の効果が合わさる現象を解析しようとした場合に,既存の多重検定補正法で有意な結果が現れにくいのかに関して,数値実験を用いて検証をし,更に,数理統計基盤として,無限次数多重検定法(LAMP)を開発した.複数のmiRNAを検定した時には,結果の偽陽性を防ぐために,得られたp値に対し,検定したmiRNAの個数で割る操作をしたp値を利用しないといけない(Bonferroni補正).また,2つ以上のmiRNAの効果を考えた場合には,考えうる組合せ数で割る必要がある.組合せを考えると,検定数が爆発的に増加するため,有意な結果が現れる可能性が絶望的に低くなり,結果として,複数の重ねあわせ効果は無いと考えられてしまうことが多かった.本年度は,更にこの多重検定補正の手法に関し,速度は犠牲にしつつも,より精度高く補正できる手法 FastWYを開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
miRNAの機能解析手法を作るという目標に対し,昨年度ネットワーク解析技術を作成した上で一定の成果を生んだが,機械学習的な結果は,「最も良い」結果であってもそれが「十分有意」であることは示せなかった.これは,機械学習やデータマイニング分野の手法一般的に言えることであるが,最も良い予測は,与えられたデータの中で最も良いものであり,一歩引いて見た時に,効果があるものかどうかは別の問題であることが多かった.本年の研究では,良い予測がどれだけ有意であるかの統計的な有意性を与えられるため,miRNAの解析にとどまらず,機械学習・データマイニング,あるいは,統計の分野に対しても影響を与えられるものであると考えられる.これは,本研究として十分な進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度,ネットワーク解析技術を構築し,本年度は,統計的に有意な組合せを得る技術を構築した.今後は,これらのデータを組合せ,実データへと適用していく.miRNAのデータは,研究開始当初に比べ,急激に増加している.更に,miRNAの多様な機能と制御機構が発見されている.このように取り巻く環境は変化しているが,その結果,解析技術への期待は高まっていると考えられる.多様なデータを同化させることで,機能解析手法の精度を高めていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
私の異動に伴い,計算機の増強と,人件費に関する支出を,異動後支出できるようにすることで,安定した計算機稼働と,雇用をすることが可能になると判断したため. 本年度は,計算機中のハードディスクに関して増強を行う.更に,人件費に関しては,短期的なアルバイトを雇用することで,データとプログラムの整備を行う.
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Research Products
(4 results)