2014 Fiscal Year Annual Research Report
性機能を司る脳-脊髄神経ネットワークにおける非シナプス的神経制御メカニズムの解明
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24680039
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂本 浩隆 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (20363971)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 性機能 / 脳 / 脊髄 / 神経解剖 / 非シナプス的 / ガストリン放出ペプチド / オキシトシン / 神経内分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこれまでに、脊髄に存在するガストリン放出ペプチド(GRP)ニューロン系が雄優位な局所神経ネットワークを構築し、雄の性機能を調節していることを見出した。この新規に見出した性機能を司る回路システムと脳との機能的・器質的結びつきについて、現在はさらに脊髄GRP系とオキシトシン(OXT)との機能連関についての解析を進めている。 平成26年度の実績の概要としては、(1)脊髄GRP系のOXTに対する応答性の解析で、OXTをラット脊髄クモ膜下腔に局所・微量投与し、ERKのリン酸化を指標に性行動に特異的なGRPニューロンの活性化を明らかにした。また、効果的な脊髄GRP系の解析系の樹立を目指し、(2)GRPプロモーターの下流に蛍光タンパク質の遺伝子を繋いだトランスジーンを挿入したトランスジェニック(TG)・ラットの作出を引き続き行っている。平成26年度までに、蛍光発光を指標にキャラクタライゼーションを行い、1ラインにまでラインの絞り込みを終えた。さらにin・exo vivo 解析の効率を高める目的で、人工酵素TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)およびCRISPR/Cas9技法を応用し、GRP遺伝子座に赤色蛍光タンパク質遺伝子をノックイン(KI)した、GRP―赤色蛍光タンパク質遺伝子KI・ラットの作出も行っている。平成26年度に、当該KIラット作出に必要となるGRP遺伝子に特異的なTALENのコンストラクトおよびCRISPR/Cas9/ガイドRNA作製に成功した。さらに、予備的解析から、本コンストラクトは、GRP遺伝子に対するゲノム編集が可能であった。平成27年度はこのTALEN・CRISPR/Cas9のコンストラクトを用いて、実際にKIラットの作出を試みる。 本TGおよびKIラット・ライン確立により、生体でのGRPニューロンの神経生理を解析する上で飛躍的な効率化を実現できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により種々の新知見を見出すことができ、各種遺伝子改変動物の作出も順調に進んでいるものと判断する。以上の理由から、研究はおおむね順調に進展しているものと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度にキャラクタライゼーションを完了したGRP-Venus TGラットを用いて、種々の生理実験に供する。さらに、平成26年度に構築したTALENおよびCRISPR/Cas9に関するコンストラクトを用いてGRP―赤色蛍光タンパク質遺伝子ノックイン(KI)・ラットの作出を試みる。また、exo vivo 系において脊髄に分布する軸索からのオキシトシンのエキソサイトーシス現象の超微形態学的解析法の確立を進める。現在、マイクロスライサーを用いて急性脊髄スライス (厚さ350-500 um) を作製し、酸素飽和させた人工脳脊髄液 (aCSF) 内で平衡化させた後、高濃度カリウム (56 mM) を含むaCSFで数分間刺激し、エキソサイトーシスを誘発している。その後、脊髄スライスを固定し、定法に従い樹脂包埋を行い、超薄切片を作製し、オキシトシンに対する免疫電顕を行い解析する。平成26年度までの下垂体後葉を用いた予備的解析で、解析系の確立に成功しているので、平成27年度は本格的に脊髄スライスの解析、および定量化を目指す。 最終年度に伴い、結果の取りまとめと学会発表および論文発表を積極的に行う。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変動物の繁殖が予定より進まなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子改変動物の系統維持代金として使用する予定である。
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Research Products
(24 results)