2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の力学応答機構解明のための細胞骨格~核膜~DNAの力学的相互作用の解析
Project/Area Number |
24680051
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
長山 和亮 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10359763)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 生体・情報計測 / 細胞核 / 細胞骨格 / メカノトランスダクション |
Research Abstract |
本研究では細胞の力学応答機構を解明するといった観点から,まず,細胞骨格と核膜,核膜とクロマチンとの間の機械的な結合力を定量化する手法を確立する.そして,細胞が自身の機能を大きく変化させる分化・脱分化の過程で,これらの力学的相互作用がどのように変化するのか,力学的側面ならびに生化学的側面から解析し,細胞の機能発現との関連性を明らかにすることを目的としている. 平成25年度は,血管組織から単離直後の収縮型平滑筋細胞を血清含有培地中で静的に培養することで,収縮性の低い合成型細胞へと脱分化させる系を構築した.そして,これまでに構築してきた細胞骨格レーザ切断装置を組み込んだ共焦点顕微鏡システムに,本年度の科研費にて新たに高感度のデジタルカメラセットを導入し,平滑筋細胞が脱分化していく過程での細胞骨格と核の3次元的な位置関係や,DNAの局在・凝集度の変化を詳細に解析した.合成型細胞に脱分化していくと、核周囲のアクチン細胞骨格が減少し核が肥大化すること,核内のDNAの局在が核膜側から核内中心部にまで広がる傾向があること,このような変化がアクチン細胞骨格と細胞核との力学的な結合状態に依存する可能性があることが分かってきた.また,このような平滑筋細胞を平面培養しながら,アクチン細胞骨格と核膜との結合力を,実験とシミュレーションによって見積もる手法を確立し,特に核膜の上を通過しているアクチンストレスファイバと核膜との結合力が強く,細胞外に生じた力や変形を核に効率良く伝達する働きがあることを初めて明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,血管組織から単離直後の収縮型平滑筋細胞を血清含有培地中で静的に培養することで,収縮性の低い合成型細胞へと脱分化させる系を構築した.この過程で,細胞骨格と核の位置関係や,DNAの局在・凝集度の変化を解析した.合成型細胞に脱分化していくと、核周囲のアクチン細胞骨格が減少し核が肥大化すること,核内のDNAの局在が核膜側から核内中心部にまで広がる傾向があること,このような変化がアクチン細胞骨格と細胞核との力学的な結合状態に依存する可能性があることが分かってきた.また,このような平滑筋細胞を平面培養しながら,アクチン細胞骨格と核膜との結合力を見積もることに成功した.すなわち,アクチン細胞骨格と核の結合状態を考慮した力学モデルを考案し,実験とシミュレーションによって,両者の結合力を算出した.特に,核膜の上を通過しているアクチンストレスファイバと核膜との結合力が強く,細胞外に生じた力や変形を核に効率良く伝達する働きがあることを世界で初めて明らかにした(Nagayama K et al., Journal of Biomechanics 47, pp. 1422-1429, 2014 として論文発表,Issue Highlight として取り上げられた).
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに,細胞骨格の力や変形が,核内のDNAにどのような作用を与えるのかに注目していく.通常,核内のDNAはヒストン八量体に巻き付いた状態でクロマチン構造を構成し,ヒストンがメチル化されると凝集してDNAの転写が抑制されると考えられている.そこで,実際に細胞が引張りや圧縮,流体せん断といった動的な力学環境に曝されたときの,細胞骨格近傍に位置する核内クロマチンとメチル化ヒストンとの局在を詳しく調べるとともに,FRAP法など活用して,これらのダイナミクスの変化を明らかにしていく.これと並行して,平滑筋アクトミオシン調節タンパク質であるカルデスモンや合成型細胞特有の胎児型平滑筋ミオシン重鎖SMembなどのmRNA発現に注目する.そして,細胞骨格~核膜~クロマチン間の力学的相互作用と細胞の機能調整との関わりを,遺伝子発現レベルで探っていく.
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Research Products
(13 results)