2014 Fiscal Year Annual Research Report
サブミリ解像度のPET動画像の実現に向けたガンマ線計測技術の確立
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24680057
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊池 洋平 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50359535)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 画像診断システム / 核医学診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
位置敏感型検出器開発技術に関しては、昨年度に引き続き核医学装置用の検出器材料として有望なテルル化カドミウム(CdTe)ウエハ上(サイズ20mm×20mm、厚さ 1㎜)への金ナノ粒子インクを使った電極膜形成を行って検出器を形成し、その性能各種を評価した。以前の研究で作製された検出器のエネルギースペクトルでは光電ピークが確認されていたものの、CdTeの比抵抗を考慮した値よりも低い値の陽極-陰極間抵抗が確認されており、これらが良好なエネルギー分解能の妨げとなっていた。当初は電極を焼成して形成する際の金ナノ粒子の飛散が原因と考えていたが、本年度の調査によってインク焼結によるCdTeウエハの特性変化であることが分かった。また、その特性変化を回避しつつ、良好な電極形成が可能な焼結温度の条件を明らかにすることができた。この知見によって662keVのγ線に対して数%程度のエネルギー分解能を実現できるようになった。これらの調査の過程で、陽極・陰極のいずれか一面において整流作用の発現が確認された。この現象を有効な利用は漏れ電流を低下させることに寄与し、検出器性能をより向上させることが可能であると考える。位置敏感化のために必要な抵抗回路網材料に関しては、その候補材料を複数選び出すことができた。今後の研究で最適材料を決定する予定である。このほか、他研究機関の装置利用によるGaAs位置敏感型検出器の開発にも着手した。 また、感度計測技術に関しては、この手法を導入した場合に改善される再構成画像の画質に関しての評価を行った。シミュレーションを通じて得られた結果として、バックグランド中にあるホットスポットの画素値向上に同手法が十分に貢献できることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の開発項目である位置敏感型検出器開発技術および高感度計測技術に関して、平成26年度のそれぞれの開発目標を達成することができた。前者に関しては有望な位置分解能を達成しうる電極作成とおよび抵抗材料探索がポイントであったが、概ねこれを達成することができた。前者に関しては実績の概要に記載した通り低漏れ電流の電極の作製に成功しており、これは検出器の出力信号の低ノイズ化を意味する。ノイズは一般の検出器で重視される基本的な性能(エネルギー分解能・時間分解能など)に影響を及ぼすほか、本開発に置いては良好な位置分解能の達成に関して特に重要であるため、この実績は特に重要なものである。 また、高感度計測技術開発に関して得られた画像上での提案手法の有効性の確認は、本研究のアイディアの有効性・実現性を証明するものである。研究課題の方向性が正しいことであることを示す実績として、前述の内容と同様に重要なものであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は基盤技術の開発段階であった第1・2段階を総括するとともに、これらを組み合わせた総合的な評価を実施して開発構想およびそれに基づいて確立した技術を全体的に評価する予定である。また、CdTeの他にGaAs位置敏感型検出器の開発を進めるほか、本研究の将来の技術的展望を調査する付加的な研究項目として、検出器上への薄膜状の信号回路の作製技術に関する基礎開発を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは昨年同様に人件費・謝金の使用額分の支出額が理由となっている。これは研究作業の効率化が一因となっている。一方でその額は全体予算に対する割合として大きくはなく、資金使用がほぼ計画通りであることを示している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者の所属期間内においてインクジェット技術を用いたCdTe検出器についての開発環境は整ったことを鑑みて、GaAs検出器開発のための外部研究施設の装置利用のための旅費に充てる予定である。この旅行によって訪問先の専門家との議論も実施し、効率的な使用を目指す。
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