2015 Fiscal Year Annual Research Report
脳刺激による学習・記憶神経回路の修飾と運動機能促進:リハビリテーションへの応用
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24680061
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
田中 悟志 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (10545867)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 経頭蓋脳刺激法 / 脳卒中 / リハビリテーション / 学習 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation: tDCS)は,頭蓋上に貼付した電極から微弱な直流電流を与えることで,非侵襲に大脳皮質興奮性を促進する手法であり,リハビリテーションへの応用が期待されている。昨年度までの研究では、上肢運動技能の獲得に対して効果的なtDCSパラメータの検討を健常成人を対象とした実験により行った。その結果、身体に対する注意と運動野へのtDCSを組み合わせることにより、それぞれ単独で行うよりも(1)長期的に運動皮質可塑性の誘導ができること、(2)運動学習や運動記憶の定着が長期的に促進されること、の2点が明らかになった。 今年度は、運動障害を持つ脳卒中患者を対象として,tDCSと身体への注意の組み合わせが運動技能の再獲得に有効であるかを検討した。10名の脳卒中患者が実験に参加した。従属変数は、日常的な上肢生活動作を計測する簡易上肢機能検査(STEF)の成績とした。介入直後および1週間後の課題成績を計測した。10名のデータを解析したところ,介入直後,介入から1週間後のいずれも有意な介入効果は認められなかった。そこで,麻痺手の運動機能が低い2名のデータを除外し,8名のデータで新たに解析を行った。その結果,tDCSと注意の併用条件において,介入前と比較し介入から1週間後では課題遂行時間が有意に減少した。すなわち、麻痺手の運動機能が比較的高い脳卒中患者においては,tDCSと身体への注意を組み合わせが麻痺側上肢運動機能を刺激から1週間後に改善させる可能性を示した。 tDCS効果の検証に関して、今後は患者の障害の程度についても考慮する必要がある事を示唆する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常者を対象とした実験で新たに開発したtDCSの効果的な刺激方法に関して、今年度は予定どおり脳卒中患者を対象とした実験によりその有効性を検討することができた。脳卒中患者を対象とした検討は、本研究目標の達成において重要な位置を占めており、予定通り実施できた点は意義がある。
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Strategy for Future Research Activity |
集めたデータをまとめて学術論文として発表する。
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Causes of Carryover |
実験のための国内出張回数が予定より少なく、また論文出版に関わる費用も予定より少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験のための国内出張費および英文校正の費用に使用する予定である。
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Research Products
(15 results)