2013 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌の発癌や進展に深く関与しうる長鎖ncRNAの量的・質的な異常の探索
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24680092
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
丸山 玲緒 札幌医科大学, 医学部, 助教 (60607985)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 長鎖ncRNA / ヒストン修飾 / ChIPSeq / 大腸癌 / DNAメチル化 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に引き続き大腸内視鏡検体を用いたChIPSeq実験を行い、背景粘膜と癌部のヒストン修飾プロファイル(H3K4me3, H3K27me3)を取得し、サンプル間での比較解析を行った。更に近年充実が著しいTCGAやENCODEプロジェクト等の公共データベースを最大限に活用し、RNASeqやメチル化データの統合解析を試みた。それらの解析により、大腸癌において普遍的にDNAメチル化により不活性化している領域群を同定し、そこに存在するいくつかの長鎖ncRNAに着目して更なる解析を進めた。多数の臨床検体でメチル化や発現状態の確認を行うとともに、癌細胞株を用いた分子細胞生物学的な実験により、それら長鎖ncRNAが細胞に及ぼす影響を検証し、その生理的・病理的意義を解明するべく検討を進めている。 また長鎖ncRNAの質的異常を検索する目的で、新学術領域「ゲノム支援」の支援を頂き、長鎖ncRNA領域を含む全エキソン解析を50検体で施行し、癌患者において変異を認める長鎖ncRNAのリストを作成した。現在、自施設の多数の臨床サンプルにおけるそれらの変異の出現頻度や臨床的特徴との関連の検証を進めている。また更にゲノム支援の支援により、大腸の癌部・非癌部の32検体のRNASeqを施行し、長鎖ncRNAの融合遺伝子の有無につき検索を進めている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り大腸癌検体の各種分子プロファイリング(ChIPSeq, ExomeSeq, RNASeq) を施行し、更に公共データベースを最大限に活用し、詳細な統合解析を行った。癌における長鎖ncRNAの量的・質的異常の検索という視点から、候補となる長鎖ncRNAのリストを作成し、現在その中のいくつかの候補に関しては、検証作業と機能的な解析の段階に入ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに大腸癌でのみ活性化している長鎖ncRNAや、癌において不活性化していると思われる長鎖ncRNAの候補を同定してきた。本年度はsiRNA実験とMTTアッセイを組み合わせて、癌細胞株においてこれらの候補ncRNAの発現をノックダウンさせた時に細胞増殖に与える影響を測定し、機能的に重要と思われる長鎖ncRNA候補を絞り込む。 上記スクリーニングで絞り込まれた長鎖ncRNA候補に関して、siRNAによるノックダウン、あるいは発現ベクターによる遺伝子導入を行い、それが細胞に与える影響を各種アッセイにより検証する。その際の遺伝子発現全体の変化をマイクロアレイにより解析する。またRNA-FISHによる長鎖ncRNAの細胞内局在を確認し、その情報を基にRNA-pull down法を用いて長鎖ncRNAと結合するタンパク質の同定を試みる。 上記において同定し絞り込まれた長鎖ncRNAのリストに対し、多数の内視鏡臨床検体(DNAとRNA)を用いて、TaqMan-qPCRによる発現量の検討やpyrosequencingによるプロモーター部のDNAメチル化の定量等を施行する。 また長鎖ncRNAの質的異常のスクリーニングとして新学術領域「ゲノム支援」事業の支援を得て、lincRNAを含む全エキソンシークエンスを50検体で、RNASeqを32検体で施行した。現在そのデータ解析を詳細に行い、多検体による検証を始めているが、今年度は候補となるlincRNAの突然変異を絞り込み、第3世代シークエンサー(IonPGM)を活用して多サンプルの多領域を同時に検証することを試みる。高頻度で突然変異を認めるlincRNAに関しては、細胞株を用いて分子細胞生物学的手法による機能的解析を行う。
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Causes of Carryover |
本年度にシークエンス解析を施行した検体数が当初の予定よりも少なく、かつ予定よりも低コストで施行できたため、助成金の一部に未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はその助成金と合わせ、細胞モデルを用いた機能的な実験や臨床検体での検証実験に必要な各種試薬類の購入に使用する。また一部を実験補助員への謝金として使用し、研究の迅速な進展を計る。
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Research Products
(5 results)