2012 Fiscal Year Annual Research Report
海洋溶存有機物プールの消長を決定づける微生物炭素ポンプのメカニズムと効率の解明
Project/Area Number |
24681002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山下 洋平 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授 (50432224)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 海洋科学 / 生物地球化学 / 溶存有機物 / 微生物炭素ポンプ |
Research Abstract |
海洋溶存有機物は地球表層における最大級の還元型炭素プールを構成するが、そのプールが定常状態下にあるのか、あるいは非定常状態下にあるのか全く不明である。溶存有機物の90%以上は生物学的に難分解であり、難分解性成分が海洋溶存有機物プールの挙動を支配する。近年、難分解性溶存有機物の生成機構として微生物炭素ポンプという新しい概念が提唱された。微生物炭素ポンプとは、海洋細菌が易分解性有機物を難分解性溶存有機物へと変換し、それらは長時間(~数千年)分解されずに海水中に留まり、炭素循環から隔離されるという機構である。しかし、そのメカニズム解明および定量的評価には至っていない。そこで、本研究では、海洋細菌が生成する腐植様物質に着目し、微生物炭素ポンプのメカニズム解明および定量的評価を行う事を目的とした。 平成24年度は現場観測型蛍光光度計を導入し、北太平洋の南北断面および東西断面観測を行った白鳳丸航海において、腐植様物質の高解像度分布を世界で初めて評価した。観測結果の解析および陸上研究室での追加実験の結果、現場観測型蛍光光度計から得られるデータには様々な補正が必要である事が分かった。必要な補正関数については、平成25年度に作成する予定である。また、同航海において600以上の海水試料を採取し、EEM-PARAFAC法を用いて、海域および水深の違いに伴う腐植様物質組成の異同を評価した。 また、亜熱帯海域中深層から試料を採取し、溶存有機物の光分解実験を行った。光照射に伴い、全有機炭素濃度は減少しないものの、腐植様蛍光強度は速やかに減少する事が分かった。また、同実験により、光分解に対して難分解な成分が存在する事も明らかとなり、微生物炭素ポンプにより生成される腐植様物質の中には、生物学的および光化学的に難分解な成分が存在する事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微生物炭素ポンプのメカニズム解明に必須である腐植様物質の分布・組成の評価を当初の計画通りに行う事ができた。また、その定量評価を行うには、光化学的実験よりも生成実験の方が適している事が分かり、平成25年度以降の研究の方向性を決定する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね計画とおりに進んでいるため、当初計画通りに研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に行った光化学的分解予備実験の結果、微生物炭素ポンプの効率を求めるには、当初購入予定であった光化学的酸化式全有機炭素測定装置を使用するよりも、生成実験の方が適していると判断した。そのため、平成24年度に予定していた全有機炭素測定装置は購入せず、平成25年度に行う生成実験用消耗品および備品の購入等に使用する予定とした。
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Research Products
(3 results)