2013 Fiscal Year Annual Research Report
下水基質からPHAを高蓄積する混合微生物群集におけるPHA蓄積機構の解明
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24681010
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
井上 大介 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (70448091)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 省資源技術 / バイオリファイナリー / PHA / 下水汚泥 / 微生物挙動解析 |
Research Abstract |
本研究では、feast-famine制御下で下水汚泥から集積されるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)蓄積細菌集積系による下水基質からのPHA高蓄積機構の解明を目標として、(1)PHA蓄積細菌の挙動解析法の開発、(2)下水汚泥中のPHA蓄積細菌分布の把握、(3)下水汚泥から構築したPHA蓄積細菌集積系による下水基質からのPHA蓄積過程における微生物挙動の解明を目指している。 平成25年度の研究においては、課題(3)について、酢酸を基質とした、ラボスケール連続回分式リアクター(SBR)による下水汚泥からのPHA蓄積細菌の集積、ならびにその集積系のPHA蓄積特性と微生物挙動の解析を実施した。SRT5日、HRT1日の12時間サイクル、曝気量0.5L/L/分に設定し、20℃または28℃の温度下でSBRを運転した結果、いずれのSBRでも30-40サイクルまでポリヒドロキシ酪酸(PHB)蓄積率が上昇し、その後は低下していく傾向を示した。1バッチの蓄積試験によるPHA蓄積特性評価の結果、種汚泥では最大PHB蓄積率34%、PHB収率0.25C-mol PHB/C-mol酢酸であったが、65サイクル後のSBRでは、20℃運転下で最大PHB蓄積率62%、PHB収率0.88C-mol PHB/C-mol酢酸、28℃運転下で最大PHB蓄積率58%、PHB収率0.70C-mol PHB/C-mol酢酸となり、大幅なPHA蓄積能の向上が観察された。また、平成24年度に開発したphaC遺伝子を標的とするPCR-DGGE法を用いてPHA蓄積細菌群集の解析を行い、PHA蓄積能が高まった集積系内で優占化するバンドの存在を確認した。 また、酢酸以外の基質を用いたPHA蓄積細菌集積系の構築のために、下水汚泥ならびに分離菌株による各種基質からのPHA蓄積能を調査した結果、短鎖脂肪酸がPHA合成基質として利用しやすく、グルコース、グリセロールは基質として利用しにくいことを明らかにした。 さらに、本研究に関連する成果を学術論文1編および学会発表4件として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、当初計画していた、酢酸を基質とするPHA蓄積細菌集積系の構築とその特性把握、微生物挙動解析、ならびに他の基質を用いたPHA蓄積細菌集積系の構築に関連する検討を概ね実施し、研究成果の発表も順調に進められている。しかし、酢酸を基質とするPHA蓄積細菌集積系に関して、運転中に装置故障が発生したため、平成25年度に予定していた各種条件下でのバッチ試験によるPHA蓄積特性の把握を十分には行うことができなかった。そのため、バッチ試験の一部を平成26年度にも継続し、酢酸を基質としたPHA蓄積細菌集積系におけるPHA高蓄積機構の微生物生態学的理解を進めていく予定である。なお、装置故障の原因は明らかになっており、再発防止対策等も整備できているため、今後は遅滞なく進めていくことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、最終年度として、以下の2点の実験的検討を進める。 1点目として、平成25年度に引き続き、酢酸を基質とするPHA蓄積細菌集積系に関する検討を実施する。特に、集積過程におけるSBR運転条件のうち、温度、曝気量以外の条件を変更し、集積されるPHA蓄積細菌群の差異を明らかにするとともに、各種条件下のバッチ試験を行い、PHA蓄積と微生物挙動との関連性を明らかにし、酢酸からのPHA高蓄積機構を微生物生態学的視点から明らかにしていく。 2点目として、酢酸以外の基質からのPHA蓄積における微生物挙動の解明に取り組む。平成25年度までに得られた知見を踏まえ、下水汚泥にとってPHA合成基質として利用しやすい短鎖脂肪酸(酢酸以外)と基質として利用しにくいグリセロールを中心として検討を進めていく。上記の酢酸を基質として構築したPHA蓄積細菌集積系を用いたバッチ試験による他基質からのPHA蓄積特性の評価を行うとともに、他基質を用いた集積系の構築、ならびにその集積系のPHA蓄積特性評価を実施する。 各検討の実験手法等は概ね既に整備できており、当初予定通りに研究を遂行する準備が整っている。唯一、グリセロール濃度の分析については、新たに分析カラム入手を含めた手法整備が必要であるが、既に見通しは立っており、遅滞なく検討を遂行できる状態である。 また、平成26年度は、国内外での学会発表ならびに学術雑誌への投稿をさらに積極的に行い、国内外での情報発信を進めて行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
微生物挙動解析で実施したシーケンス解析について、当初想定していた解析委託先よりも安価な解析委託先を見つけることができ、委託解析費を当初計画よりも低く抑えることができたため、当該年度の所要額と実支出額に差異が生じた。 平成25年度中に完了できなかった、酢酸を基質とするPHA蓄積細菌集積系に関する検討の一部を平成26年度にも継続実施するため、平成26年度の支出額が当初計画よりも僅かに多くなることが想定される。そこで、平成25年度の余剰額を上記の継続実施課題の遂行に充てることにより、当初予定していた検討内容全体を問題なく進めて行く。
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Research Products
(5 results)