2013 Fiscal Year Annual Research Report
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24681050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 弓 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50466819)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 記憶 / 戦争記憶 / 日中戦争 / オーラルヒストリー / 中国近現代史 / 科学と迷信 / 雨乞い / コミュニティ |
Research Abstract |
5月に中国北京師範大学で行われた国際学会「トラウマ記憶と文化表象」に参加し、これまでの研究成果について口頭発表を行った。テーマは「民間の口頭伝承は如何に戦争の記憶を表象するか」とし、文学分野で記憶問題を扱う中国、イタリア、アメリカの研究者たちと積極的に意見交換を行った。発表内容は、同学会の論文集『トラウマ記憶と文化表象ーー文学は如何に歴史を描くか』に論文として投稿し、査読を経て掲載された。本研究は歴史学の手法を利用しているが、既存の研究分野の枠を超えた領域横断的な研究であるため、文学分野の国際学会で発表・意見交換を行うことは研究の可能性を広げる上で重要な基盤となった。 9月より産休に入ったため、フィールドワークによる研究を行うことができず、本年度は資料収集と論文執筆を行った。資料収集は、調査地域の戦争記憶に深くかかわる対日協力者の問題について集中的に行った。これまでの聞き取り調査では、村人の戦争記憶の中で最も強く残っている内容は、中国語で「漢奸」(裏切り者)と呼ばれる対日協力者たちの動向である。戦争の対敵協力の実態やその戦後に残した問題については国外で広く研究成果が上がっている。本年度はできる限りそれらの資料を集め、基礎となる情報収集を行った。今後これをもとに、山西省農村部の対日協力の具体的ありかたとその記憶についても、論文を執筆していく予定である。なお、調査地域との連絡は継続し、次年度以降に調査を再開することができるよう、準備・計画している。 2014年10月開催予定のOral History Association(Madison, USA)での発表を準備、申請し、通過の連絡を受けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妊娠出産のため研究を中断せざるを得ず、25年度は予定していた研究の多くを行うことができなかった。しかし、前年度に予定以上の進展があったため、総合すればおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、一昨年度の調査結果より、その重要性が明らかになった南社村を中心とした大王廟会及び雨乞い活動の実態調査を継続的に行っていく。また、同地域での戦争記憶の聞き取りも進め、雨乞い活動と記憶の共有の関連性について考察する。その際、対日協力のありかたについても調査を行う。 社会主義中国の集団農業や人民公社化、そして「迷信的」活動の禁止を経て改革開放以後に復活した雨乞い活動について、その時代を生きた人々が如何に考え感じてきたのかを聞き取り調査で明らかにし、中国の近現代史を農村の雨乞いと記憶の視点から捉えなおす。 これらの調査結果を検討し、随時研究ノートや論文を発表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
妊娠のため、海外でのフィールドワークを行うことができなかった。また、産前産後の休暇及び育児休業の取得によって、平成25年9月24日~平成26年3月31日に研究を中断した。このため、研究費を使用できず次年度使用額が生じた。 出産・育児による研究中断のため、研究期間を平成28年まで1年間延長した。次年度使用額は1,330,000円で、当初予定していた調査における旅費及、人件費及び学会発表における旅費への支出を計画している。また、今年度は物品費としてパソコン及びプリンターの購入も予定している。
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