2012 Fiscal Year Research-status Report
ロンドンの文化政策・文化産業における建築家の有名性の生産・流通・消費に関する研究
Project/Area Number |
24683016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
南後 由和 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 講師 (10529712)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 文化政策 / 文化産業 / ロンドン / オリンピック / 建築家 |
Research Abstract |
1.建築の文化政策に関する調査:80年代のサッチャー政権下による都市再開発の規制緩和と国営企業の民営化、90年代のメージャー政権下の官民トップダウンによる物的環境整備中心の拠点開発、2000年代のブレア政権下の都市再生における、行政、民間、非営利部門のパートナーシップの推進の流れを整理し、80年代以降の環境運輸地域省の都市政策、文化・メディア・スポーツ省、王立芸術委員会(RFAC)、大ロンドン評議会(GLC)の文化政策の変遷と、公的部門による文化産業分野への介入の実態に関する調査を進めた。 2.建築の文化産業に関する調査:王立英国建築家協会(RIBA)で、建築家の社会的地位向上に関する啓蒙活動の内実を明らかにするために、第一に、図面・模型・写真のアーカイブ事業、外部美術館・博物館との連携プログラム、第二に、定期刊行物や報告書などの分析を行なった。また、デザイン審査の仕組みを整理するため、英国建築都市環境委員会(CABE)についての資料収集を行なった。 3.ロンドン・オリンピック2012における建築家の有名性の生産・流通・消費に関する研究1オリンピック開催期間中に競技施設および会場周辺のフィールドワークを行なったうえで、建築の文化産業のオリンピックに関する活動・刊行物の考察、建築専門誌と新聞のオリンピックに関する記事の収集を進めた。 4.ロンドンとニューヨークを拠点に制作活動をしている美術家のス・ドホの展覧会「ス・ドホ|パーフェクト・ホーム」展(金沢21世紀美術館)の展覧会図録に、家とアイデンティティ、場所と移動、絵画と彫刻とファッションと建築の境界などを考察した論考「境界を編みなおす家」を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題以前に研究してきた、戦後から80年代までの日本の建築家の有名性の生産・流通・消費に関する研究の延長線上に、現代のロンドンの都市再生における建築家の有名性の生産・流通・消費に関する研究を接続することができた。 平成24年度に実施予定の「ロンドンにおける文化政策」、平成25年度に実施予定の「建築の文化産業のフィールドワーク」、平成26年度に実施予定の「ロンドン・オリンピックにおける建築家の有名性の生産・流通・消費」に関する調査を並行して進めたので、予定より順調に研究が進展したと言える。ロンドン・オリンピック期間中に現地でしか得られない建築の文化産業に関する各種活動、ロンドン・オリンピックに関する各種メディアの資料を収集できたことも大きな成果である。 しかしながら、資料の収集が量的に順調だった分、現段階では考察と分析にとどまっており、論文などで研究成果をまとめるには至っていないため、「(2)おおむね順調に進展している。」とした。次年度以降はまず、ロンドンの建築の文化政策と文化産業の仕組みを、政権ごとの都市政策の展開と関連づけて明らかにする歴史的研究の成果を論文などでまとめていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、ロンドンにおける文化政策、建築の文化産業のフィールドワーク、ロンドン・オリンピックにおける建築家の有名性の生産・流通・消費に関する調査を並行して進める。 今年度はロンドン・オリンピックの競技施設や会場を中心にフィールドワークをし、有名建築家と資本の結びつきに関する光の部分やマスメディアが注目する地域を中心に調査をしたので、次年度は、貧困地域であった会場のストラット・フォード地区において、いかなる社会的排除と包摂の問題が生じているのかなど、都市再生の影の部分についても調査を行う。 建築の文化産業のフィールドワークは、今年度は供給者・専門家向けの団体・組織を中心に行なったので、次年度はThe Architecture Foundation(AF)やOpen Houseなど、享受者・市民向けの団体・組織を中心に調査する。研究計画の変更点として、ヨーロッパの建築の文化政策、文化産業の動向を総合的に把握するため、今年度はロンドンの建築の文化産業に関する調査機関以外に、コペンハーゲン、ストックホルム、ヘルシンキの建築博物館でも資料収集を行なった。次年度は世界の同分野を牽引するオランダ建築博物館(NAi)などを調査対象に加える。このことは今後、建築の文化政策・文化産業に関する研究を体系化していくうえでの比較研究として重要かつ有益であると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では今年度は8月と3月に2回ロンドンに渡英し、現地での調査研究に従事する予定だったが、8月の1回の渡英のみとなった。主にその分の研究費を次年度に繰り越した。次年度は夏と冬に2回、今年度より長期間ヨーロッパ出張をし、ロンドン以外にロッテルダムのオランダ建築博物館とハーグのハーグ市立美術館を調査対象に加える。そのための外国旅費として研究費を使用する計画である。その他、主に文化政策・文化産業関係図書、都市社会学・都市論関係図書、建築史・建築論関係図書、美術館・博物館学関係図書、メディア論関係図書などの物品費として研究費を使用する。
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