2013 Fiscal Year Research-status Report
ロンドンの文化政策・文化産業における建築家の有名性の生産・流通・消費に関する研究
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24683016
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
南後 由和 明治大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10529712)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 建築 / 文化産業 / イギリス:オランダ |
Research Abstract |
1.第一に、ヨーロッパの建築の文化政策・文化産業の動向を総合的に把握するため、第二に、建築の文化政策・文化産業に関する研究の体系化に向けた比較研究のため、今年度はロンドンに限らず、同分野を牽引する研究機関のひとつであるオランダ建築博物館とRKDを調査対象に加えた。また、具体的な作家のコレクションの収集、保存、公開などに関する事例分析を掘り下げて研究するために、Fondation Constantの活動を調査対象に設定し、各美術館のコレクションの調査、財団関係者やアムステルダム国立美術館のキュレーターへのヒアリングを実施した。往復書簡、図面などの一次資料の収集や美術館の収蔵状況の把握などを通じて、建築の文化産業の実態を詳察することができた。 2.ロンドンオリンピック2012における建築と資本の結びつきに関する研究の一環として、会場のストラットフォード地区のショッピング・モールに関する分析を試みたコラム「ロンドンオリンピック2012とSM」を執筆した。 3.ロンドンの美術館V&Aでの「ヴィジョンズ・オブ・ジャパン」展など、建築の展覧会のキュレーションやコンペティションの審査に従事してきた建築家の磯崎新の仕事を整理した『磯崎新建築論集第7巻 建築のキュレーション』の編集協力と解説を執筆した。これまでの磯崎新に関する研究は、建築物および都市を対象としたものが多くを占めていたのに対して、本研究は、展覧会、国際会議、コンペティションの審査、公共事業のコミッショナーなどを通じて、建築外の領域を巻き込みながら、建築の新たな文脈や枠組みを提示する「建築のキュレーション」に照準を定めた点に独自性がある。また、イギリスの現代美術家デミアン・ハーストの仕事を陳列・キュレーションの観点から考察した論文「陳列とキュレーション:ユニクロ、コムデギャルソン、デミアン・ハースト」を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はロンドンに加え、オランダの建築の文化産業に関する研究を実施することで、ヨーロッパの建築の文化政策・文化産業の動向を総合的に把握することができた。また、オランダとの比較研究をすることで、ロンドンにおける建築の文化政策・文化産業の特色を相対化することができた。研究は順調に進展しているといえるが、オランダの事例分析に重点を置いたため、ロンドンの事例分析に関しては十分な進展をはかることができなかった。そのため、総合的には「(2)おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、ロンドンとオランダにおける建築の文化政策・文化産業に関するフィールドワーク、建築家の有名性の生産・流通・消費に関する調査研究に取り組む。今年度に収集したFondation Constant関連の一次資料のほか、建築雑誌や展覧会カタログなどの分析を進める。また、世界最大級の国際建築展であるヴェネチア・ビエンナーレの見学も行う。 最終年度にあたるので、これまでフィールドワークで収集してきた建築の文化政策と文化産業に関する資料の分析を整理し、都市政策の展開と関連づけて考察した研究の成果を論文などにまとめていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では今年度は8月と3月に2回ロンドンおよびオランダに長期滞在し、現地での調査研究に従事する予定だったが、3月のオランダでの調査研究1回のみとなった。主にその分の研究費を次年度に繰り越した。 次年度は夏と冬に2回、今年度より長期間ヨーロッパ出張をし、ロンドンとオランダの建築文化産業機関以外に、ヴェネチアの国際建築展を調査対象に加える。そのための外国旅費および通訳・翻訳料として研究費を使用する計画である。その他、主に文化政策・文化産業関係図書、都市社会学・都市論関係図書、建築史・建築論関係図書などの物品費として研究費を使用する。
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