2013 Fiscal Year Annual Research Report
「注意バイアス調整治療法」の効果評価研究―神経科学的作用機序に着目して―
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24683025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
袴田 優子 東京大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (30450612)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 注意バイアス / 認知バイアス調整法 / 不安 / 核磁気共鳴画像 / 情動 / ランダム化比較対象試験 / コルチゾール / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、対象者のリクルートを実施した(基礎データについては167名までデータを収集している)。実験では、臨床症状の有無に関する構造化面接、精神状態に関する心理学的および認知科学的評価、機能および構造核磁気共鳴画像(MRI)の撮像、内分泌反応の計測を実施した。 これまでに集積している基礎データ88名のコルチゾール反応について解析を行い、注意バイアスとの有意な関連を見出した。特に、就寝時コルチゾールレベルが高い人ほど、注意バイアスが有意に強いという結果であった。加えて、就寝時にコルチゾールが低下しにくい人は、抑うつ傾向が強いという結果も認められた。これらの結果について、Journal of Affective Disorders誌(査読有)に論文公開した。 また、以前の研究において研究代表者らは注意バイアスと密接な関連をもつとされる不安関連パーソナリティが膝下部前帯状皮質(sgACC)の糖代謝量の低下と関連することを見出しているが、今回、自分自身を超えたより広大な存在(例:宇宙や世界)との繋がりを感じたり霊的現象を受け容れたりする傾向である「自己超越性」が高い人ほど、このsgACC活動が高いという結果を見出した。自己超越性は一般にウェル・ビーイングと関連することが知られており、不安が強い人でも、こうした傾向を啓発することで不安に関連したsgACCの活動低下が抑制される可能性が示唆された。この成果を、Plos One誌(査読有)に論文公開した。 さらに、機能的MRIデータについては、41名までデータ集積をしており、このデータのまとめ・解析を行い、国際誌に論文投稿した。加えて、認知機能検査と注意バイアスの関連について収集した105名のデータを基に、現在、国際誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
北里大学病院の新設工事に伴い、核磁気共鳴画像(MRI)装置が使用不可能な期間があったため、計画よりもやや遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
MRI装置室内設置の液晶モニターが納入し次第、新病院におけるMRI実験環境の整備を行う。引き続き、参加者リクルートを継続してゆく。H26年度は、研究代表者の異動により、MRI以外の実験系統を整備し直す必要があるが、出来る限り迅速に再設定を行う。リクルートについては東京大学の全学掲示板を利用するなど、実験参加者人数の確保に努めてゆく。
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Causes of Carryover |
平成26年10月に、新病院建設に伴い旧病院のMRI装置撤去が判明した。レイアウトを確認したところ、当初の予測に反し、頭部と足部が逆転した構造で、従来の方法(足部側にある窓を通して室外から視覚刺激を投影)を取ることができず、室内で投影可能な液晶モニターを購入する必要が生じた。業者に発注したが海外輸入により納品に3ヵ月要し、1月から実施予定のMRI実験が3ヵ月遅延したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
液晶モニター納入後、速やかに新病院に新たに設置されたMRI装置室内に、設置する。MRI撮像パラメータの確認作業を行い、出来る限り早い段階で、参加者リクルートおよび実験を再開する。謝金、人件費、検体試料、解析委託料等に充当予定である。また、研究代表者の所属先異動があるため、一部実験機器の補充を行う予定である。また、得られたデータの公開に向けた準備を進めていく(論文投稿料、英文校正料、学会参加費、旅費等)。
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Research Products
(17 results)