2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24684006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
深澤 正彰 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (70506451)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 確率積分 / 強近似 / 離散ヘッジ / 凸リスク測度 / 取引費用 / オイラー丸山近似 / 停止時刻 |
Research Abstract |
1.伊藤積分(確率積分)のRiemann和(単純可予測過程に対する確率積分)による近似において、用いる単純可予測過程の変動の激しさに関する制約(コスト制約)の下で、近似誤差を漸近的に最小化する問題を解決した。より正確には近似誤差の期待二次変動(平均二乗誤差)の漸近下界を求め、その下界を漸近的に達成する単純可予測過程列を陽に構成した。単純可予測過程を被積分過程に対して不偏なクラスに限定した場合は、研究代表者による先行研究によって既に解決済みであった。この不偏性は自然な要請であるため、不偏な場合の最適解が、不偏性の要請を外したより広いクラスにおいても最適であると予想されていた。本研究によってこの予想が、コスト関数の凹性の下でしか成立しないこと、凸性の下では不偏でない、ある単純可予測過程によって、近似誤差を劇的に縮小できることを示した。この問題は数理ファイナンスにおいて、連続時間の枠組みで与えられた投資戦略をどのように有限回の取引で近似するかという現実的な問題に対応している。不偏なクラスは戦略の自然な離散化に対応し、コストの凸性は資産の供給曲線の形状から自然に導かれる。本研究成果は金融実務において通常採られる資産運用の方法が非効率的であることを明らかにし、のみならず最適な方法を陽に提示するものである。時間等間隔で戦略を自然に離散化する方法に比べ、最適解は漸近平均二乗誤差を理論的に1/9以下にすることがわかった。離散ヘッジ問題を期待効用最大化の枠組みで定式化しても、適当なスケール極限において最適解は近似誤差最小化の解と一致することも見出した。 2.凸リスク測度による、資産価格付けの第一基本定理の定式化に成功した。これは取引費用やリスク回避性向などによって原資産価格が非線形に形成された市場において、派生商品のリスク選好に依存した無裁定価格付けが可能であるための必要十分条件を与えたものである。非線形な市場における解析の基本的な枠組みを提供する成果である。 3.確率微分方程式モデルの新しい効率的なシミュレーション方法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボラティリティの不確実性と線形取引費用両方を考慮した離散ヘッジ戦略を前年度末に構成した。今年度の研究成果は、この離散ヘッジ戦略の最適性を議論する上で重要な役割を果たす。非線形取引費用の下でのヘッジ戦略の離散化誤差に対して予想外の結果が得られ、これを踏まえてボラティリティ不確実性も考慮に入れた最適戦略を構成する段階に入った。
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Strategy for Future Research Activity |
関連分野の研究者との議論を通して、課題の効率的な達成を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
共同研究者との研究打ち合わせのために使用する。
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