2014 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙硬X線精密撮像分光観測に向けた広帯域CCDカメラの開発研究
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24684010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中嶋 大 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70570670)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | X線CCD / ASIC / 放射線耐性 / ラッチアップ |
Outline of Annual Research Achievements |
陽子・重粒子照射による新型ASIC(MND03)の放射線耐性試験を千葉県の放射線医学総合研究所重粒子線がん治療装置(HIMAC)にて行った。 一般に宇宙用ICに対する放射線損傷には、トータルドーズ効果とシングルイベント効果の2種類がある。前者は、衛星が南大西洋地磁気異常帯付近を通過するたびに浴びる捕捉陽子を主要因とした経年的損傷である。後者は特に素子の熱破壊につながるラッチアップが問題となる。そこで本研究のカメラで使用するセンサに対して、陽子線および重粒子線照射による放射線耐性評価実験を行った。まず線エネルギー付与が大きいXe 6MeV/uと Fe 6MeV/uをベアチップに照射し、ラッチアップ耐性を測定した。照射中も軌道上と同じ信号処理を行わせたが、ラッチアップは一度も起こらなかった。高度550km 軌道傾斜角30°の軌道におけるラッチアップの起こる頻度は、48年に一度(90%信頼度)と求められる。実際にはラッチアップしても熱破壊を防ぎつつ電源をオフ・オンする機構を設けるため、MND03を用いたCCDカメラのラッチアップ耐性は問題ないと言える。 次に陽子線 100MeVを照射し、トータルドーズ耐性を測定した。我々はベアチップに対して吸収線量に換算して1Mrad以上の陽子線を照射した。照射中はラッチアップ試験と同様に疑似CCD信号を処理させ、入力等価雑音や線形性能、ゲインなどの性能変化をモニタした。軌道上で590年に相当する吸収線量に対して、入力等価雑音と積分非線形性の有意な劣化は見られなかった。 以上の試験からMND03 は、雑音性能は期待通りではなかったが、衛星搭載X線CCDカメラのフロントエンド回路としては十分な機能を持つことが検証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ASICの放射線耐性が検証出来たことにより、宇宙での使用準備が整った。一方でCCDセンサと接続しての分光性能評価試験をする必要があり、これは現状の設備で次年度行うことが出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
CCDセンサと接続しての分光性能評価試験をする。CCDセンサを真空槽内に設置して冷却し、単色X線を照射してエネルギー分解能やその速度依存性を評価する。これにより、本研究の最終目的である高速低雑音CCDカメラが完成する。
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Causes of Carryover |
本研究で新規開発したCCD高速信号処理用ASICと、既存のX線CCDセンサとを結合し、単色X線を照射して分光性能を評価する試験が未完であるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
X線CCDセンサを真空槽内に設置するための治具や、デジタル回路基板周辺の物品に使用する。
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Research Products
(11 results)