2013 Fiscal Year Annual Research Report
世界最大の超伝導ミリ波検出器アレイによる宇宙背景放射偏光成分の精密測定
Project/Area Number |
24684017
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
長谷川 雅也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (60435617)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宇宙背景放射 / インフレーション / 偏光 / 超伝導検出器 |
Research Abstract |
本研究は、世界最高感度を有する宇宙背景放射(CMB)観測実験装置「POLARBEAR-2」を完成させ、CMB偏光の精密測定を行なって、原始重力波を主要なインフレーション理論で発見が予想される相対強度1%のレベルまで探索する事を目的として行っている。CMB偏光測定はインフレーションの直接の証拠となる原始重力波発見のもっとも有望な手法であり、宇宙論最大の課題であるインフレーション宇宙の実験的検証が現実的なレベルでいよいよ可能になる。 本年度は主として、偏光検出器を配置する為の真空槽(クライオスタット)の開発、望遠鏡により集光されるCMBを検出器が配置される焦点面に導く為の光学部(オプティクスチューブ)、及び検出器の性能を評価する為の試験システムの開発を進めた。クライオスタットに関しては実際に7600個の超伝導検出器を配置する焦点面構造を外部からの妨害電波や赤外線を遮断する為の多層のフィルターと共に搭載した状況で目的の250mKに冷却する事に成功し、熱設計の原理検証を完了した。来年度オプティクスチューブを搭載した状況で、検出器の試験運用及び光学特性の評価を行って、要求通りの性能(ノイズレベル、周波数応答性、応答の角度依存性)が出ている事を確認して開発は完了となる。また、試験システムについては、POLARBEAR-1で使用されている検出器を用いて原理検証を行い、一度に1000個以上の検出器(TESボロメータ)の性能評価が可能な事を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績で述べた通り、POLARBEAR2レシーバ開発の一つの鍵は検出器を動作温度まで冷やせるかどうかであるが、ほぼ本番の観測と同じセットアップで冷却に成功し、また少数の検出器を短期間で試験するシステム開発の完了により、計画研究からの大きな遅延も無くレシーバ開発完了の目処が付いた。さらに試験システムについてはPOLARBEAR-2に限らず他の超伝導検出器のR&Dにも流用可能である事を学会等で報告し、その後、原子核や天文分野の研究者が実際に我々の実験室に短期間滞在して、技術交流が実現した。今後読み出し系の開発を含め多彩な応用に発展して行く道筋が出来たため、当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまで開発を行って来た全ての構成要素を統合し、最終的な性能評価試験を実験室にて行う。特に本観測で重要となるパラメータ(ノイズレベル、周波数応答性、応答の角度依存性)が要求を充たす事を、別途開発中の基準ミリ波偏光源を用いて確認し、すべての開発を完了する。レシーバシステムの開発が完了し次第、チリへの輸送を開始し観測の準備を行い、実際にPOLARBEAR-2レシーバを用いて科学観測を開始する事を目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
別予算にて開発中の超伝導検出器の開発に遅延が生じ、試験システムを用いた性能評価も完了が来年度夏頃までずれ込む予定である。その為の研究員を当初の予定より二ヶ月程長く雇う為に次年度使用額が発生した。 超伝導検出器の性能評価の為の研究員の雇用に用いる。雇用は当初は夏前までの予定であったがそれを8月いっぱいまで延長し、その間に性能評価及びレシーバへの搭載、統合試験を行う。
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Research Products
(12 results)