2012 Fiscal Year Annual Research Report
空間反転対称性の破れたトポロジカル絶縁体の原子分解能分光イメージング
Project/Area Number |
24684022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
幸坂 祐生 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (80455344)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / Rashba効果 / トポロジカル絶縁体 |
Research Abstract |
本研究では、空間反転対称性の破れた結晶において強いスピン軌道相互作用がもたらす特徴的な電子状態を、走査型トンネル顕微鏡を用いた原子分解能分光イメージング測定により探索する。特に、トポロジカル絶縁体及びRashba効果に注目し、実空間・波数空間の両面からそれらが共存する特異な電子状態の解明を目指す。具体的には、重元素からなる中心対称性のない層状極性半導体BiXY(X = Se, Te, Y = Cl, Br, I)をプロトタイプ物質として組成・キャリア濃度・不純物・磁場効果に関する系統的な測定を行う。 本年度は、これまでに知られている中で最大級に大きなRashba効果を示すBiTeIの測定を行った。STM像からは原子分解能が得られることが示され、同時にdI/dV像には明瞭な電子定在波が観測されることが判明した。この像をフーリエ解析することにより、電子定在波は二種類存在することが確認された。角度分解光電子分光の測定結果と比較することにより、一方の定在波はRashba分裂バンド間での散乱に対応し、他方はバンド構造のゆがみを介したバンド内散乱に対応することが見出された。これら二種類の分散からRashba分裂の大きさを見積もることができ、それは角度分解光電子分光による結果とよく一致する。このことは、理論予想に反し、電子定在波によりRashba分裂が観測可能であることを実証したものである。さらに、バンド内散乱に対応する電子定在波は、トポロジカル絶縁体での電子定在波とも共通する起源をもっており、BiXYがRashba分裂とトポロジカル絶縁体に共通する物理の探索に適した舞台であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原子分解能でのSTM像を得ることに成功し、また、明瞭な電子定在波をdI/dV像に観測したことで、今後のより詳細な測定が可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
BiTeIにおける電子定在波の詳細な観測を通して、この物質の特徴的な電子状態を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1回の測定時間増加によるデータの質・量の向上を図るための大型液体ヘリウムデュワーを導入する予定であった。しかし、世界的なヘリウム不足により性能テストができず、納入が次年度にずれこんだ。 平成25年5月に納入される大型液体ヘリウムデュワーに用いる。
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