2012 Fiscal Year Annual Research Report
レアメタルフリーL10-FeNiの実現に向けた、成膜・スピン・電子状態の基礎研究
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24684029
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
小嗣 真人 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (60397990)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | L10-FeNi / パルスレーザー蒸着 / レアメタルフリー / エピタキシャル成長 / 表面界面 / 垂直磁気異方性 / 光電子顕微鏡 / 放射光 |
Research Abstract |
レアメタルフリー磁性材料L10-FeNiは高い磁気機能を有し、なおかつ希少金属を用いないことから、次世代自動車のモーターとして高い注目が集まっている。平成24年度は、L10-FeNiを作製するための蒸着装置の開発と試験測定を行った。本装置はパルスレーザーを用いたレーザーアプレーションによってFeやNiを蒸着できるのが大きな特徴で、高い磁気異方性が期待されている。 まず試験測定として株式会社パスカルに設置されたPLD装置を用いて測定を行った。アブレーションレーザーはSpectra Physics社製Quanta-Ray Pro 350を使用した。Nd:YAGレーザーで、レーザー結晶を組み合わせることで、波長266nmの4倍高調波が出るようになっている。4倍高調波出力は最大値280mJであった。 本装置を用いてCu(001)上にNiを蒸着した。Cu(001)基板を300℃に加熱することで清浄表面を得た。その後、10分間の成膜を行いながらRHEED信号強度の時間変化を記録した。RHEED振動は第3ピークまで明瞭に観察できた。その後振動の振幅や周期が乱れている様子が分かった。成膜開始から第3ピークまで、peak to peakで周期を見積もると、14から15秒であることがわかった。これは実験条件設定時に予想した、面心格子原子が寄与する1/2ユニットセルでの原子平坦面の形成に対応すると考えられる。また成膜の前後で、RHEEDパターンとストリークを比較したところ、複数見えるストリーク像は蒸着の前後で大きな変化を示さなかった。これらの情報を集約した結果、Ni(001)/Cu(001)はepitaxial成長しており、LlO-FeNi相の作製が可能であることが示唆された。 上記の実験結果を基に、真空チャンバーの設計を行って、3月末に成膜装置を完成させることができた。今後は本装置を用いて、FeNiの交互積層を行う予定である。 また、これと並行して従来のMBE蒸着も行っており、当初目的としていたステップテラス構造と磁区構造の取得にも成功している。今後はPLDとMBE蒸着の差異についても議論する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画を前倒しして、PLD装置の建設と試験測定を行うことができた。また従来のMBE蒸着法での成膜も並行して行い、目的の磁区構造を既に取得することができた。当初計画の213を初年度に完遂できたことから、自己評価を(1)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、PLD蒸着およびMBE蒸着によるL10-FeNi薄膜の作製を行う計画である。初期成長過程における、構造・磁区構造・電子状態を一挙に取得し、磁気異方性発現メカニズムの解明を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PLD装置を初めとする実験機材を予定より安価で導入することができたため、未使用金をCu(001)基板、FeおよびNi蒸着ソースの購入費、あるいは旅費、論文印刷費に使用する計画である。
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Research Products
(14 results)