2013 Fiscal Year Annual Research Report
IBM弧は海洋性島弧か? 古フィリピン海プレートと東南アジア基盤岩の繋がり解明
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24684037
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
谷 健一郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (70359206)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 島弧マグマ活動 / ジルコン年代測定 / 大陸地殻形成 / フィリピン / 中生代 |
Research Abstract |
伊豆小笠原弧の基盤である古フィリピン海プレートの地殻構造とその起源を明らかにする為に、本年度は以下のような海底と陸上の地質調査を実施した: 1.九州東方の大東海嶺において調査船・無人探査機を用いた調査航海(KR13-15航海)を平成25年9月に行った。本航海は航海期間中に三連続で発生した台風の影響を受け、予定していた9潜航の内わずか1潜航しか実施することができなかった。しかし大東海嶺中軸部からカンラン岩類の露頭を初めて発見することに成功した。 2.フィリピン共和国中南部の中生代基盤岩類の系統的な地質調査を実施予定であったが、同じく平成25年11月に発生した台風30号によって調査予定地域のセブ島一帯が大きな被害を受け、調査を行うことが出来なかった。しかし代替として同様の基盤岩類が分布するフィリピン南東部のディナガット島について平成26年2月に調査を行い、目的としていたカンラン岩・深成岩・火山岩類などをサンプリングすることが出来た。 3.古フィリピン海プレートの深部地殻構成岩類をサンプリングする為に、台湾南東の蘭嶼島の地質調査を平成26年3月に実施した。蘭嶼島は古フィリピン海プレートの上に形成された新生代の火山島であるが、火山岩中に多くの深部地殻由来の捕獲岩類が含まれており、本調査においてカンラン岩・ハンレイ岩などを採取することに成功した。 現在は得られた岩石試料の岩石学・地球化学的分析とジルコン年代測定を集中的に進めており、古フィリピン海プレートが主に中生代島弧地殻から構成されることが明らかとなった。またその起源として比較検討されてきたフィリピン共和国東縁のオフィオライト群はジルコン年代測定から従来考えられてきたように中生代のものではなく、主に始新世に形成されたことが明らかになりつつある。これらの成果については国際会議(IAVCEI2013)や国内会議で発表し、順次国際誌への投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は夏季~秋季にかけて多数発生した大型台風によって、当初計画していた陸上・海底調査の大部分を予定通りに実施することが出来なかった。しかし無人探査機を使った大東海嶺の潜航調査では初めてカンラン岩の露頭を発見することに成功し、これは古フィリピン海プレートの深部地殻構造とテクトニクスを解明する上で重要な成果である。また陸上調査に関しても代替で実施したフィリピン共和国ディナガット島・台湾蘭嶼島における地質調査によって古フィリピン海プレートやその比較対象となる東南アジアの基盤岩類の採取に成功した。このように岩石試料のサンプリングについては、当初想定していたよりも進捗状況に遅れが出ているが、平成25年度に調査を実施することが出来なかった地域に関しても現地共同研究機関が過去に採取した試料を入手しており、現在分析を開始したところである。さらには平成26年度前半に追加調査を実施することで補う予定である。 採取された岩石試料に関しては、系統的な記載岩石学的研究・ジルコンU-Pb年代測定法を用いた年代決定をはじめ、主要元素・微量元素・同位体の全岩化学組成分析が順調に進んでいる。その結果、当初想定していたよりも古フィリピン海プレートの地殻構造や始新世以前のテーチス海北東縁部のテクトニクスに関して多くの新知見が得られ、研究目的を達成しうる目途が付きつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は研究計画の最終年度にあたり、年度前半はこれまで採取してきた古フィリピン海プレートや東南アジア基盤岩類の分析解析作業を集中して行う予定である。また平成25年度までに調査が完了しなかったフィリピン共和国のパラワン島・ミンダナオ島の基盤岩類については5~6月に短期間の現地地質調査・岩石試料サンプリングを行い、これまでの採取試料に加えて分析を行う。 年度後半はこれまで得られた岩石学・地球化学・年代学的データを統合し、古フィリピン海プレートの地殻構造発達史、始新世以前のテーチス海北東縁部のテクトニクスについての新たなモデルを構築し、その成果について国際誌への投稿と、国際学会(American Geophysical Union Fall Meeting)での発表を行う予定である。 尚、研究代表者は平成25年度末で独立行政法人海洋研究開発機構を退職し、平成26年度から独立行政法人国立科学博物館地学研究部の研究員に採用されることになった。それに伴い、年代測定に用いる鉱物の分離精選作業や地球化学分析の準備作業に必要な器具・消耗品類で追加購入が必要なものが生じる可能性がある。これらについては平成26年度の研究経費で購入する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は現地調査の予定地域が台風の被害を受け、予定していた調査を年度内に実施することが出来なかった。それに伴って旅費や採取予定だった岩石試料の分析処理に関する経費を平成26年度に持ち越さなくてはならなくなった。 平成26年度前半に平成25年度に実施できなかった現地調査を行う予定であり、その旅費として使用する。またその調査で採取した岩石試料の分析解析に必要な消耗品類や器具の購入にも充てる予定である。
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[Journal Article] Zircon U-Pb age and its geological significance of late Carboniferous and Early Cretaceous adakitic granites from eastern margin of the Abukuma Mountains, Japan2014
Author(s)
Tsuchiya, N., Takeda, T., Tani, K.,, Adachi, T., Nakano, N., Osanai, Y., Kimura, J.-I.
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Journal Title
Journal of the Geological Society of Japan
Volume: 120
Pages: 37-51
Peer Reviewed
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[Journal Article] An inter-laboratory evaluation of OD-3 zircon for use as a secondary U–Pb dating standard2013
Author(s)
Iwano, H., Orihashi, Y., Hirata, T., Ogasawara, M., Danhara, T., Horie, K., Hasebe, N., Sueoka, S., Tamura, A., Hayasaka, Y., Katsube, A., Ito, H., Tani, K., Kimura, J.-I., Chang, Q., Kouchi, Y., Haruta, Y., Yamamoto, K
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Journal Title
Island Arc
Volume: 22
Pages: 382-394
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The earliest mantle fabrics formed during subduction zone infancy2013
Author(s)
Harigane, Y., Michibayashi, K., Morishita, T., Tani, K., Dick, H.J.B., Ishizuka O.
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Journal Title
Earth and Planetary Science Letters
Volume: 377-378
Pages: 106-113
DOI
Peer Reviewed
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