2013 Fiscal Year Annual Research Report
後周期遷移金属を用いたメタロセノイドクラスターの創製と反応解明
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24685016
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
村橋 哲郎 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 教授 (40314380)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | クラスター / 触媒 / 反応性 / 金属錯体 / 後周期遷移金属 |
Research Abstract |
本研究では、後周期遷移金属元素を用いてメタロセノイドクラスターの創製と反応性の解明をおこなう。「メタロセノイド遷移金属クラスター」は、本研究者が2006年に初めて創製した化合物群であり(Science 2006)、新型の後周期遷移金属サンドイッチ型錯体とみなせる。従来型の単核メタロセン構造は、18電子則の制約を受けるため後周期遷移金属の触媒構造として採用することが原理的に不可能であった。これに対して、本研究代表者の発見は、複数の後周期遷移金属原子をサンドイッチ構造内に導入した場合には、高い安定性を有し、かつ基質を受容するための配位座を持つメタロセン型骨格を形成する新原理をもたらす。平成25年度では、前年度に引き続きこれまでにメタロセノイドクラスターに適用できることがわかっている金属(Pd, Pt)を用いて合成手法の確立と反応性解明を目指した研究を実施した。その結果、シクロオクタテトラエンが解離性のある3座架橋配位子として機能することを明らかにし、シクロオクタテトラエンを用いた3核サンドイッチ錯体を全金属種を通じて初めて合成することに成功した。ビスシクロオクタテトラエン3核サンドイッチ錯体は、X線構造解析、各種NMR解析によりその構造を同定し、これまでに合成してきた7員環トロピリウム配位子を持つ3核サンドイッチ錯体とは内部結合構造が異なることを明らかにした。シクロオクタテトラエン3核錯体の反応性についても検討し、2つのシクロオクタテトラエン配位子の1つを容易に解離し、アレーン類をバインドする機能を持つことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、後周期遷移金属元素を用いてメタロセノイドクラスターの創製と反応性の解明を目指した研究を遂行しているが、平成24年度、25年度の研究により、新しい配位子の可能性を探索して、これまでに用いることが困難と考えられてきた環状配位子(たとえば誌黒尾オクタテトラエン)が有用な3座架橋配位子として機能することを実証した。これらの進展は後周期遷移金属クラスターの反応開発に向けて新たな基点を与えると期待される。よって本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度、25年度の研究により、後周期遷移金属メタロセノイドクラスターの創成と反応性解明に関する重要な基礎的知見が順調に得られていることから、これらをもとにして後周期遷移金属メタロセノイドクラスターに特徴的な有機基質のバインド能、活性化様式を明らかにしていく。また、後周期遷移金属メタロセノイドクラスターに適用しうる配位子の種類を拡大および金属種の適用範囲の精査を引き続き推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Pd, Ptを用いたメタロセノイドクラスターの合成と反応性研究をおこなう中で、平成25年度までに反応性に関する新しい知見を得た。この知見をさらに深く探求する研究を次年度におこなうこととしたため、次年度使用額が生じた。当初計画より平成26年度に平成25年度計画の研究を継続しておこなうこととしており、平成26年度計画では物品費に充当する等の使用計画を立てている。 主に研究を推進するための物品費に充当する。
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