2013 Fiscal Year Annual Research Report
圧電結晶の活性表面と弾性表面波の超長距離伝搬を利用した高感度極性ガスセンサ
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24686013
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
辻 俊宏 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70374965)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 圧電結晶 / 弾性表面波 / ボールSAWセンサ / 加工変質層 / 非晶質シリカ / 紫外線照射 / 微量水分 / 温度補償 |
Research Abstract |
本研究の目的は圧電結晶の活性表面を用いた弾性表面波の超長距離伝搬を用いた高感度極性ガスセンサを開発することである。当初、圧電結晶の極性ガスに対する活性表面は紫外線(UV)照射した表面により見出されたが、研究の過程で圧電結晶の非晶質層に基づく活性表面がより高性能であることが分かった。しかし、センサの定量性および再現性を検証するためには、精密な温度補償と測定系内への水分リークの完全な遮断が必要である。また、極低濃度の水分については較正が不十分だった。そこでH25年度には、精密な温度補償が可能とされている高調波ボールSAW素子にH24年度に微量水分への高感度性が見出されたゾルゲルSiOxを塗布したセンサを開発した。測定された周回波にWavelet解析を適用して基本波(80 MHz)と3次高調波を抽出し、各周波数における遅延時間と振幅2分法を用いて効率的に決定する手法を開発した。その結果、周波数差分により測定室の空調に起因した0.1℃程度の温度変動に起因した出力の変動までも高精度に除去できることが分かった。次に、センサ性能を検証するために最も高感度な水分検出器であるキャビティリングダウン分光装置(CRDS)を用いて微量水分濃度を較正するとともにセンサセルのリークの原因解明に利用して再現性の高い微量水分測定を行うための基盤を整えた。その結果、作製したセンサは10 nmol/molレベルの水分濃度の変化を明瞭に検出できる感度を持ち、検出限界は0.2 nmol/molだった。この性能はボールSAWセンサが感度の面でCRDSに匹敵する性能を有することを示唆する。更に、応答時間に関してはCRDSよりも短いことが分かった。以上のことから圧電結晶の活性な表面の起源の一つである非晶質層を摸擬してボールSAWセンサに適用することで従来にない高感度なSAWセンサを開発できる目途が立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圧電結晶の非晶質層が微量水分に対して高感度であることを見出し、その簡便な模擬方法についてもゾルゲル法を用いることで目途が立った。高調波素子を用いたセンサを用いて高精度な温度補償を実現できたことは、圧電結晶の活性表面の精密な評価を実現する上で重要な進展である。また、検出対象物質のリークを完全に遮断するために必要な配管やセンサセルの作製に関する知見も集積されてきた。これらの進展を踏まえて紫外線照射による圧電結晶の活性表面の調査を行うことで当初の目的を達成できると考えられる。このため本申請課題はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
高調波素子の利用により温度変動によるセンサ出力の変動を精密に除去できる見込みが得られたが、センサの計測系(パルサーレシーバ、オシロスコープ等)における温度補償は不十分だった。この点について、ボールSAWセンサは多重周回を用いることが原理であるため、異なる周回間の差分を用いてセンサそのものの応答(SAW伝搬経路における変化)を高精度に抽出できると考えられる。そこで、H25年度に行った周波数差分に加えて周回差分を適用することで、圧電結晶の活性表面を検証するための測定方法を改善し、紫外線照射したセンサの特性を調査する。また、圧電結晶の非晶質を利用した微量水分センサについて材料的にセンサ出力のドリフトを低減する方法を検討して、実用的な微量水分測定を行うことができるセンサの実現を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
メタルOリングの着脱を容易にした新しい設計のボールSAWセンサセルを発注する予定だったが、金額が満たなかったために緊急性の高い配管部品の購入に充てた。その結果、次年度使用額が生じた。 発注予定のセンサセルの購入経費に充てる。
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