2013 Fiscal Year Annual Research Report
超平滑な酸素還元触媒を用いた純水中でのGe表面の金属フリー・原子レベル平坦化
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24686020
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
有馬 健太 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10324807)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 酸素還元 / グラフェン / ゲルマニウム表面 |
Research Abstract |
超LSIの微細化が極限に達しつつある今日、従来までのシリコンよりも二倍以上の高いキャリア移動度を有するゲルマニウムを基板としたトランジスタ開発が世界中で進められている。半導体デバイスの信頼性は、デバイス構築前の半導体デバイスの平坦性で決まる。国際的な半導体に関するロードマップによると、マイクロラフネスを0.2nm以下に抑える技術が必要とされているが、これはGe表面においては未だ実現されていない。本研究の目的は、金属汚染が一切残留しない条件下でゲルマニウム単結晶表面を原子スケールで平坦化できる、純水中の溶存酸素が介在した低環境負荷・超清浄型の表面創成プロセスを開発することである。これを実現する為にはまず第一に、非貴金属系の酸素還元触媒を開発することが必要である。 今年度はまず、昨年度に開発した電解剥離法の実験パラメータを最適化することにより、バルクグラファイトから高い収率で酸化グラフェンフレークを取得することに成功した。 また、不活性ガス中でのアニール処理によって、酸化グラフェンを還元することができた。さらに、アニールにおけるガス中にアンモニアを添加することにより、グラフェンネットワーク中への窒素原子のドーピングを試みた。そして、X線光電子分光法を用いることにより、1%以下と微量ではあるものの、窒素原子が確かにドーピングされていることを確認した。 さらに、サイクリックボルタンメトリー法を用いることにより、定性的ではあるものの、窒素原子のドーピングにより、グラフェンフレークが高い酸素還元活性を発現することを確認した。 最後に、純水とGeO2/Ge基板との反応性を分子スケールで明らかにする実験に取り組み、よく知られたSiO2/Siと比べて、GeO2は水をよく吸収し、高い濡れ性を持つことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究を推進するにあたり、重要な開発項目は二つある。一つは純水中の溶存酸素を効率的に還元できる非金属系の酸素還元触媒の開発、もう一つは、純水中でのGe表面のエッチング微視的機構の解明である。 既に、計画の遂行に必要な複数の実験装置の開発や整備を進めており、非金属系の酸素還元触媒の形成と評価を開始している。 また、GeO2/Ge構造と水分子との反応性を調査する実験にも取り組むと共に、独自の装置開発を進めている。 上記に加えて、二つの開発項目に関して、得られた成果を誌上及び学会で積極的に発表しており、本研究は計画通りにほぼ順調に推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、RDE(Rotating Disk Electrode)法等を用いた、より詳細な電気化学測定によって、窒素ドープグラフェンの酸素還元活性を定量的に評価することを目指す。同時に、得られた結果をグラフェンフレーク形成プロセスや窒素原子のドーピングプロセスにフィードバックし、触媒の原子構造について最適化を行う。また、超平滑SiC表面を基材とし、その上に窒素ドープグラフェンを搭載するための実験も行う。具体的には、平滑なSiC表面上に高品質なグラフェン(単層もしくは二層)を形成し、アンモニアアニール法によりドーピングを行うと共に、その表面原子構造をラマン分光法や走査型プローブ顕微鏡等により明らかにする。 さらに、ゲルマニウム酸化物(GeO2)で被覆されたGe表面と水との反応性を分子スケールで調査する実験を進める。具体的には、真空雰囲気下で稼働するプローバーを整備し、水分子がGeO2上に吸着した時の、水分子とGe基板間での電子移動のメカニズムを明らかにする。 さらに、得られたグラフェン触媒を用いてGe表面のエッチング実験を行い、Ge表面のエッチング量と酸素還元活性の関係を明らかにする。そして、グラフェン触媒をパッド状に成形することにより、溶存酸素ガスが飽和した純水中で、Ge表面を原子スケールで平坦化することを目指す。得られた成果は取り纏めて、誌上や学会及びホームページにて発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた最大の理由は、グラフェン触媒の形成に予想よりも多くの時間を費やした点にある。グラフェン触媒は、バルクグラファイトからの電解剥離による酸化グラフェン形成、および、アンモニアを含む不活性ガス中でのアニール処理によるグラフェンの還元および、ドーピングプロセスからなる。これを実行するための設備は既に準備できているものの、高い収率で酸化グラフェンを得るための実験パラメータの最適化に時間を要した。平成25年度中にこの問題を解決したものの、形成したグラフェンの酸素還元活性を定量的に評価するための、電気化学測定への取り組みが当初よりもやや遅れた。したがって、平成25年度終了時点では、当初予定していた高精度電気化学測定を行うための実験環境が整っていない状況にある。 上記の理由を踏まえ、平成26年度には早急に、高精度電気化学測定を行うための実験環境を整える。また、得られた成果を外部に公開するためのホームページ作成費用や、英文校閲費、さらには論文投稿料にも充当する予定である。
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Research Products
(11 results)