2013 Fiscal Year Annual Research Report
超高速長時間連続撮影システムによる摩擦面のその場観察
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24686022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
八木 和行 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50349841)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トライボロジー / その場観察 / 撮影システム / 摩耗 / 表面分析 |
Research Abstract |
平成25年度においては,まず前半に,既存の実験装置を用いて,その場観察システムの有用性を確かめた.本装置は,回転するサファイアディスクと静止表面である鋼球との純すべり接触により摩擦面を作り出すものであるが,摩擦面で焼付き時に発生する塑性流動の発生および進展の現象を観察した.その結果,焼付き時における塑性流動は,これまで明らかにしてきた摩耗粉の堆積している場所からだけではなく,摩耗粉が摩擦面を通過した際に形成されるスクラッチ痕を起点として発生することもあることが明らかになった.この現象は,本撮影システムの有用性を示すことのできる非常に短い時間間隔で起こる現象であった.さらに,塑性流動の発生だけでなく,その進展過程まで観察を行った.その結果,摩擦面で発生する塑性流動の発生時間は1ms程度と極めて短いことがわかった.この結果も本研究で初めて明らかになった現象である.また,焼付き時においては,鋼球だけでなく,サファイアディスクも損傷を起こすが,このサファイアディスクに発生する亀裂の発生および進展のようすも詳細に捉えることができた.また,XRDやレーザ顕微鏡を用いた表面分析も行い,焼付き時における表面の結晶構造の変化や,表面形状の変化も調べることができた. 以上のようにその場観察システムの有用性が前半に確認できたため,その知見を元にし,年度の後半にはその場観察試験機の実験装置の設計を行った.本実験装置はサファイアディスクと鋼球との接触形態からなるものある.二つの表面はそれぞれ独立にサーボモータで駆動可能であり,任意のすべり率ですべり転がり接触が可能なものである.接触面は油層の中に設置をされており,雰囲気の温度制御も可能である.実験装置の上部には平成24年度において構築したその場観察装置を設置できる構造になっている.この実験装置を用いて平成26年度には実験を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では,本撮影システムの有用性を実験を行うことにより明らかとなった.この結果は,新しい実験装置の仕様を詳細に決定するにあたって大変有用なものでもあった.この実験装置は昨年度内に無事納品および運転の確認がなされており,本実験が開始できる状況にある.
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Strategy for Future Research Activity |
推進の方策については,昨年度までの結果において,システムの有用性および観察すべき現象が明確になったため,基本的にはこれらの知見を効率的に活用していくことで研究が問題なく進行すると考えられる.課題としては,平成26年度においては,新たに近赤外線カメラを利用して,摩耗現象と温度との関係を明らかにすることを計画の一つにしているが,安価かつできる限り性能のよいカメラの選定を行うことが必要である.このため,デモ機を用いた予備実験などを早急に行っていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験装置の購入にあたって,当初予定していた購入先よりも極めて安価で購入することが可能であったためである.この装置の設計段階から直接的に議論したおかげで構造を極めて簡略化することができ,そのためさらに安価になったものである.また,この次年度使用額は平成24年度からのものも含まれるが,本撮影システムに必要なキセノンフラッシュライトが当初予定されたものよりも安価なものでも十分な性能を有するものであることも大きな理由の一つである. 実験にあたっては高額なサファイアディスクが必要になるが,この購入費用に充てる.また,平成26年度の研究計画では近赤外線カメラを用いた温度測定も行う予定であるが,カメラの購入費用や,温度校正装置の購入費用に充てる予定である.
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