2012 Fiscal Year Annual Research Report
鉄系キャリア誘起強磁性半導体材料と次世代スピンデバイスの創製
Project/Area Number |
24686040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
PHAN Namhai 東京大学, 大学院・工学系研究科, 研究員 (50571717)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 強磁性半導体 / キャリア誘起強磁性 / Fe-As / スピントランジスタ |
Research Abstract |
1.世界初n型電子誘起強磁性半導体の開発に成功 低温分子線エピタキシャル法を用いて、InAs半導体にFeを最高9%までドーピングしたことに成功した。高解像度透過電子線顕微鏡を用いた結晶構造解析によって、(In,Fe)Asが正四面体Fe-As結合を有する単結晶であることを確認した。さらに(In,Fe)AsにBeのダブルドーナ或いはSiのドーナを同時ドーピングすることによって、母体の(In,Fe)Asに自由電子を提供できた。自由電子の密度が6×1018cm-3以上になると(In,Fe)Asは強磁性を発現することを明らかにした。また、磁気円二色性(MCD)による半導体バンドのスピン分裂の観測を行い、InAsの光学特異点において、MCDが大幅に増大することを観測し、(In,Fe)As半導体のバンドがスピン分裂していることを確認した。この結果により、開発した(In,Fe)Asが真性なn型電子誘起強磁性半導体であることを確認した。 2.世界初の8回対称磁気異方性の発見 製作した(In,Fe)Asの異方性磁気抵抗効果を調べたところ、電子濃度が少ない場合、(In,Fe)Asは2回対称および8回対称の結晶性磁気異方性を持つことを明らかにした。この8回対称の磁気異方性は今まですべての磁性体において、観察されたことがなかった。従って、(In,Fe)Asにおいては初めての観察になる。この8回対称は4回対称の成分の組み合わせによって発現できることを提案した。また、電子濃度が増えると、8回対称が消滅して、2回対称の軸が90度回転したことを見つけた。 3.電子の有効質量の測定および強磁性発現メカニズムの解明 熱電ゼーベック効果を用いた、(In,Fe)Asの電子有効質量を測定した。その結果、電子の有効質量が0.03-0.17m_0(m_0は自由電子の質量)と非常に軽い。この結果は伝導電子が有効質量の重い不純物帯ではなく、伝導帯に滞在することを明らかにした。従って、(In,Fe)Asにおける電子誘起強磁性はs-d交換相互作用によって説明できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画をFe-As系強磁性半導体の確立および結晶構造評価、磁気特性およびスピン依存伝導特性の評価として。この研究計画どおりに、世界初のn型電子強磁性半導体(In,Fe)Asの開発に成功した。また、結晶構造評価、磁気特性評価およびスピン依存伝導特性の評価を行った結果、この新材料は真性な強磁性半導体できあることを証明した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は新開発したn型電子誘起強磁性半導体の特性改善を行いつつ、それを用いたスピンデバイス構造を作製し、超高速不揮発性メモリ、再構成可能な論理回路への展開を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度には、スピンp-n接合、スピンバイポーラトランジスタを作製し、これらのデバイスにおけるスピン依存伝導特性のデバイス実証を行う。そのために、前年度から繰り越した分と翌年度の研究費を合わせて、電極形成用電子線蒸着装置の基板搬送システムを構築していく予定である。
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