2013 Fiscal Year Annual Research Report
半極性GaN/Si上へのInGaN高圧成長及び歪制御によるLDの作製
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24686041
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
本田 善央 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60362274)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | GaN / InGaN / Si基板 / レーザー / 半極性面 / 加圧MOVPE |
Research Abstract |
本研究では、Si基板上のストライプGaNアレイを用いたLD作製を目指す。加工Si基板へ成長したGaNストライプ上に、InGaN/AlGaN MQWを活性層とした縦方向電流注入によるLD構造を作製する。これまでに、Si基板上ストライプへInGaN/GaN MQWを作製し、偏光特性が量子井戸の膜厚、In組成によって変化することを見出した。量子井戸の膜厚が3nm程度以下と薄い場合には、460nm程度の発光波長を境に短波長側で偏光方向がE⊥c軸となるのに対し、長波長側ではE//cとなることが明らかとなった。また、この構造に対して、光励起によりストライプ状に励起した断面からのPLを測定すると、ある閾値を超えた場合に発光の急激な増加と、発光半値幅の細線化が観測された。このことから、この発光が誘導放出光である可能性が高いと考えており、本構造を用いることでSi基板上においてもレーザの作製が可能であること示すことが可能であった。また、この誘導放出は偏光特性と関連しており、E//cとなる条件での誘導放出が閾値的に優位であること明らかとしてきた。さらに、電流注入を目指し、低閾値化を目的とした構造検討を行った。クラッド層としてMQW層の上下に、Al0.2Ga0.8Nを100nm挿入し、光閉じ込めを改善した。また、上部のクラッドう層は、ストライプの中心を残す形で半分程度までエッチングを行い、リッジ構造の作製を行った。上記構造がない場合の閾値励起密度は3MW/cm2程度であったのに対して、上記構造を作製した場合、1MW/cm2程度と閾値を1/3程度に低減させることに成功した。この励起密度は、電流注入においても現実的な値である。また、横モード縦方向の閉じ込めによる近接パターンの明確なモードも観察された。このモードから、わずかな光の漏れが確認されたことから更なる最適化が必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザ作製において解決するべき課題は、高効率発光InGaN層の作製、導波路構造の作製、導波モードの制御、偏光の制御と多岐にわたっている。これまでに、(1-101)面でのInGaN層の作製において、In取り込み効率の高さから、高温成長が可能であることを見出している。その結果、特にCの不純物密度が減少し、InGaN発光の高効率化が可能であることが明らかとなった。更に導波路に関しては、偏光特性を制御することが可能であることを見出してた。具体的には電界Eがc軸に対して垂直になるようなモードを制御することが可能となった。これは、サファイア基板やGaN基板では実現がこれまで困難であったが、Si基板を用いることで実現したと考えている。偏光モードの制御が可能であり、導波モードとの整合は見ることが可能であった。導波路内での光の伝搬特性に関しては不明な点が多く、今後更なる見当が必要である。 InGaN結晶品質の向上は本研究内で課題として挙げている。この問題に関しては、GaNとInGaN界面に高組成InGaNを挿入することで、品質の向上を図ってきた。これは、InGaNとGaN界面にミスフィット転位をあえて導入することで上部の低組成InGaNの格子緩和を図り貫通転位を下げることを目的としている。結果として半極性面を用いることで、ミスフィット転位による面のチルトが観測されるが格子緩和が起こらない条件を見出すことに成功しており、概ね計画の沿ったInGaNの高品質化が図られている。 加圧成長は本研究の大きな要素である。加圧成長に関しては、c面上で800℃において530nmの発光を確認している。これは、通常の成長温度と比較して100℃以上も高い温度での成長であり、高品質InGaN成長の可能性がある。これまでに、品質面での向上に関して決定的な証拠が不足しているため、今後検討を加速する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、1)誘導放出光の特性評価、2)電流注入による発振の確認の2点に注力して実験を進めていく。誘導放出に関しては、光学利得、縦モード、光閉じ込めについて検討する必要がある。光学利得に関しては、縦モードからの評価も可能であるが、簡便には励起距離により評価していく。得られた光学利得の情報から、適切なキャビティー長を設計可能となる。また、端面での反射係数も重要であるため、劈開に加えて端面に誘電体多層膜を作製することでミラーを作製し、低閾値化を目指す。また、横方向横、横方向縦での光閉じ込め効率を向上させるために、リッジ構造の導入、AlGaNクラッド層の最適化を行う。リッジ構造に関しては、ICPにより金属マスクを用いて表面をエッチングすることで得ることが可能である。エッチングは上部AlGaNクラッド層の半分程度で十分であると予測されている。AlGaNクラッドに関しては、組成と膜厚ともに検討する必要があるが、電流注入を考慮すると高組成Alは不可能であるため、膜厚の最適化がメインとなってくる。以上の項目を精査することで低閾値の構造を作製し、光ポンプによる閾値の低減を目指す。最終的に電流を注入しレーザ発振を確認することが最終目標となる。ストライプ構造に電流を注入するため、電極作製プロセスの確立を目指す。上記の低閾値と並行して、電極作製プロセスを進めていく。具体的には、本研究で用いるGaNストライプは幅6μm程度と非常に細いため通常のハンドリングは不可能である。Si基板から直接縦方向に電流を注入するためには、GaNとSiの界面にあるAlN層が絶縁体となってしまい、大電流駆動を困難とする。そこで、直接n-GaNとのコンタクトを作製するために、張り合わせによるSiの剥離と、ストライプ溝部への金属コンタクト作製について可能性を追求する。今年度末までに、電流注入によるLED、LDの作製を目指す。
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