2012 Fiscal Year Annual Research Report
動力学的電子回折効果を現す非弾性散乱計算・実験が拓くスピンモーメントナノ計測
Project/Area Number |
24686070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
巽 一厳 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00372532)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノ分析 / 磁気モーメント / EMCD / EMLD / 統計的解析 |
Research Abstract |
本年度は、予備的に進めてきた理論計算に基づき、EMCDの取得技術を育成した。既に制約はあるが、ナノオーダーの多結晶粒子からの定量的な計測に成功しており、実用材料や材料中の格子不整合領域における計測の礎となるものである。 (1)統計的解析によるEMCD信号抽出の理論予測 Feの回折図形上にEELS検出器を設置した場合のEELS模擬データから多変量解析によりEMCD信号の抽出を行った。 (2)多数のスペクトルデータからのEMCDシグナルの統計的抽出 EMCDシグナルが良好に取得できる試料(Feナノ粒子薄膜をアルミニウム及び窒化ケイ素薄膜ではさみこんだもの)を研究支援者から提供いただき、走査透過型電子顕微鏡を用いて、回折条件の異なる多数のFe L_<2,3>端EELSを取得した。EMCDを表す有意なデータのみ抽出し平均化したところ、統計ノイズが平滑化され明瞭なEMCD信号が得られた。軌道角運動量モーメントとスピン角運動量モーメントの大きさの比は既報の値に近いものが高精度に求められた。 (3)入射電子の加速電圧によるEMCD信号強度の違い 電解研磨により作成した多結晶FeおよびCo薄膜において、200kVの汎用透過電子顕微鏡および 1000kVの超高圧透過電子顕微鏡でEMCDシグナルの取得を試みた。200kVにおいて、CoのEMCD信号強度は、L_3ピークのエネルギー位置で3%であったのに対し、1000kVでは12%であった。これは加速電圧を変えた理論計算での予言と定性的に合致する傾向であった。Feに関しては、1000kVにおいてのみ、9%のEMCD信号を得た。試料厚みが均一に薄いデータを多数取得し、定量的な実験が今後重要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的な磁性材料でEMCD信号を高い割合で検出でき、さらにナノ多結晶においても磁気特性の定量的評価を達成した。ただ、均一な厚みの薄膜試料を準備する点が難点であり、さまざまな角度から向上を試みる必用がある。
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Strategy for Future Research Activity |
EMLD信号はより高エネルギー分解能が必要であり、本年度末に導入予定の名古屋大学共通の例陰極電子銃を備えた走査透過電子顕微鏡+dual EELSにより、実験を進めていく。そのための試料は、EMCD実験と共通である。そのほかは、特に変更点はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第一原理電子状態計算に基づくEELS理論データ作成のためのワークステーションは新機種が望ましいため、導入を本年度は見合わせた。新機のパフォーマンスと計算需要に応じで導入を次年度に検討する。
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Research Products
(12 results)