2013 Fiscal Year Annual Research Report
次世代軽元素テクノロジーのための固体中ダイナミクスの量子・原子論的モデリング
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24686072
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
君塚 肇 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60467511)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 軽元素ダイナミクス / 量子効果 / 多重レプリカ分子動力学法 / 自由エネルギー地形 |
Research Abstract |
軽元素テクノロジーの高度化・実用化のための研究開発に貢献するため、量子効果に由来する軽元素の特異な挙動を定性的かつ定量的に評価するための材料モデリング手法を構築する。更に、構造材等の典型モデルにおける軽元素の拡散・偏析・反応等の動的過程の詳細を獲得し、軽元素特有の固体中の振舞いを量子・原子論的に明らかにする。本年度は以下の3項目に対して具体的な解析を行い、その妥当性を評価した。 1.高圧水素容器の構成材料として重要なアルミニウム系合金における水素存在状態および水素拡散過程を評価することを目的として、密度汎関数法コードVASPをソフトウェア的に疎結合させることで、第一原理計算ベースの相互作用に基づく経路積分シミュレーションを実現するための枠組みを構築した。更に最小エネルギー経路探索手法であるNEB法を用いて格子間サイト間の拡散障壁を求め、上述の第一原理計算法と経路積分分子動力学法とを連成させた第一原理経路積分分子動力学法を用いることで、アルミニウム中の水素原子の格子間サイト間における固溶エネルギー差ならびに水素原子の量子確率分布を評価した。 2.軽元素を含む一般的な原子拡散・欠陥移動過程の温度依存性を評価するため、新たな拘束条件に基づく拘束分子動力学法による自由エネルギー勾配評価手法を構築した。また本手法を活用することで、主にマグネシウム系を対象として原子・空孔等の移動過程における自由エネルギー地形を獲得し得ることを確認した。 3.主に溶質元素が固溶した金属結晶系を対象として、溶質拡散・規則化過程において特徴的な種々の相互作用の評価、ならびに着目するエネルギー曲面を第一原理計算よりも低い計算コストで記述できるような有効ポテンシャルを構築する手法を検討・整備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本モデリング手法の根幹部分である経路積分法および拘束分子動力学法の実現に対して目処を付けることができ、更に実際の解析上重要となる固体中の軽元素の相互作用を第一原理計算から直接的に取得する枠組みを構築することができたことから、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は目標とするモデリング手法の各要素手法(経路積分法、最小エネルギー経路探索法、拘束分子動力学法)を首尾よく構築し、その妥当性を確認することが出来た。一方で、その本格的な活用に当っては統計力学的サンプリングに伴う膨大な計算量をいかに処理するかが大きな課題として挙げられる。今後、経路積分法および拘束分子動力学法の双方に関してサンプリング効率を向上させるための手法の導入・改良を検討したい。その後、得られた手法を有機的に連成させることで、有限温度下での軽元素挙動の量子効果が評価できるように発展させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた海外渡航が学外・学内業務等の兼ね合いにより実施することが出来なかったため、当該助成金(未使用分)が生じることとなった。 次年度は研究の進展に伴い対外発表の機会が増えると予想されることから、次年度配分予定の研究費と合算した上で国内外の学会参加のための旅費ならびに論文投稿費等として使用することを考えている。
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Research Products
(9 results)