2013 Fiscal Year Annual Research Report
無拡散変態で生じるねじれ欠陥の制御による形状記憶合金の超長寿命化原理
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24686077
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
稲邑 朋也 東京工業大学, 精密工学研究所, 准教授 (60361771)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 形状記憶合金 / 自己調整組織 / マルテンサイト変態 / ドメイン構造 / 双晶 / ひずみ適合条件 / 欠陥構造 / 結晶学 |
Research Abstract |
平成25年度は,昨年度得られた成果を基にして具体的な合金設計を行う為に(1)立方晶-単斜晶変態におけるねじれと格子定数の関係,(2)立方晶-斜方晶変態におけるねじれと格子定数の関係,(3)βチタン合金における立方晶-斜方晶変態におけるドメイン構造形成過程の解析,の3点を重点的に行った. (1)実験で高頻度に発生することが分かっているドメイン形態に対して,ねじれ角の格子定数依存性を明らかにした.その結果,4種類ある代表的形態全てのねじれ角を同時に消去することは不可能であることがわかった.しかし特定の形態のねじれ角だけを狙って消去することは可能であることが明らかになり,ねじれ角の格子定数依存性の理論解析が完了した. (2)(1)と同様の結論を得ている. (3)Ti-Nb-Al合金の冷却-加熱にともなうマルテンサイト正・逆変態を微分干渉光学顕微鏡下でその場観察し,組織形成過程を高速ビデオカメラで撮影して解析した.その結果,高頻度に形成することが電子顕微鏡で確認されている2つの形態(便宜上,I型,II型と称する)の形成過程に大きな違いがあることがわかった.ねじれ角の小さいII型は,I型に比べると発生頻度が1/2程度しかなく,しかも結合面から核形成して発生するケースが皆無であった.この事は,結合面でのKC条件だけではドメイン結合部におけるマルテンサイト相の核形成頻度を説明できないことを示しており,幾何学的因子だけでは十分でないことが明らかになった.また冷却・加熱を繰り返して,ドメイン構造の再現生を観察したところ,10回以上サイクルしても毎回全くおなじドメイン構造が出現することが分かった.ねじれ角が一桁大きいTi-Niでは,組織に再現性がないことが分かっており,ねじれ角と組織の再現性になんらかの相関があることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ねじれ欠陥の理論解析が完了し,Ti-Ni基合金におけるドメイン構造の制御指針がおおむね得られており,研究は順調に進捗していると言える.またTi-Nb-Al合金における高速ビデオカメラを用いた組織形成過程の解析では,ドメイン形態に応じて核形成頻度が異なることを発見した.この事は,核形成のメカニズムと組織形成が深く関連していることを示しており,予想以上の成果と言える.またこの成果によって,βチタン形状記憶合金においては,I型のねじれを解消するよりもむしろ,ドメイン同士の衝突によって不可避的に形成されてしまうII型のねじれを解消するほうが,組織中の格子欠陥密度を低減させるのに有効である可能性が示唆され,本合金の組織制御指針が予想を超えて明らかになりつつある.よって区分を(1)とした.
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Strategy for Future Research Activity |
Ti-Ni基の3,4元系合金において,理論的に得られたねじれ角を実現できる格子定数と適切な変態温度を持った合金を作製するべく,格子定数と変態温度の合金組成依存性を解析している.これにより,本研究で提唱するねじれ制御の有効性を実証したい. またTi-Ni系合金のねじれ部において発生する欠陥の評価を行うために,加熱2軸ホルダーによるその場観察も含めた電子顕微鏡観察を計画している.これらにより,本研究で提唱する組織制御法の有効性を実証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
透過型電子顕微鏡用加熱ホルダーよりもむしろ,光学顕微鏡下での低倍率観察をすすめる方が研究推進状好ましいと判断し,当該ホルダー用の経費を次年度に持ち越した. 透過型電子顕微鏡用加熱ホルダーの購入を検討する.
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