2013 Fiscal Year Annual Research Report
環境負荷および製造コストの大幅な低減を可能にする水性磁性流体の新規合成法の開発
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24686090
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
岩崎 智宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50295721)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マグネタイト / 磁性流体 / 超常磁性 / メカノケミカル効果 / ボールミル |
Research Abstract |
本研究では、超常磁性マグネタイトナノ粒子の水性磁性流体を低環境負荷・低コストで簡便に合成する手法を開発することを目的として、室温でクエン酸水溶液を転動ボールミルで湿式ミリング処理するだけの簡単な操作でマグネタイトナノ粒子がメカノケミカル効果により生成すると同時に、生成したマグネタイトナノ粒子がクエン酸で表面改質されて分散安定化されるプロセスについて検討した。本合成プロセスでは、製造コスト低減の観点から、ボールを安価な炭素鋼製(鉄含有率99%以上)を使用し、さらにテフロンで内壁が被覆された容器を用いることで、コンタミネーションを最小限に抑えつつボール間の衝突のみから鉄イオンを溶出させるとともに、同時に生成する電子により水を還元して水酸化物イオンを生成させた(メカノケミカル還元)。平成25年度は主としてマグネタイトの生成メカニズムの解析を行った。このとき、気相成分の定量分析が非常に重要であることから、ボールミル容器に気相のガスを直接シリンジで採取できる構造を設け、合成中に生成するガスをガスクロマトグラフで分析した。また、容器にバルブも取り付け、容器内の気相の一部もしくは全部を不活性ガスおよび酸素で置換して気相中の酸素分圧を変化させた合成実験を行った。その結果、ボールから溶出した鉄イオンは、フェリハイドライトを経て、マグネタイトに変換されることがわかり、このとき生じる反応を酸化還元電位の観点からも説明できた。さらに、容器内の初期酸素濃度に応じて得られる磁性流体のマグネタイト濃度は変化し、初期酸素量で制御できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超常磁性マグネタイトナノ粒子の水性磁性流体を合成するプロセスとして、クエン酸水溶液を炭素鋼ボールを用いた転動ボールミルで湿式ミリングする、メカノケミカル合成法を構築した。本プロセスにおけるマグネタイトの生成反応メカニズムを提案し、ボールミル容器内の気相成分分析と溶液pH測定の結果に基づいてその妥当性を確認した。また、得られた知見の応用として、初期気相酸素量によって磁性流体中のマグネタイト濃度を制御できることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の研究計画に従い、本プロセスの実用化に不可欠なスケールアップに関する検討を主に行う。そのために、容量の異なるボールミル容器でのボールの挙動を離散要素モデルによって数値計算(シミュレート)し、容器サイズによらず発生するボールの衝突エネルギーが同様となる操作条件を決定する。実験では、500mLと2500mLのボールミル容器を用い、数値計算により決定した操作条件で同様の磁性流体が得られることを確認するとともに、発熱特性など実用において重要な物性の評価を行う。
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