2012 Fiscal Year Annual Research Report
固体表面におけるケイ素カチオンと有機塩基の協同触媒作用を利用した新反応の開拓
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24686092
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
本倉 健 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 講師 (90444067)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 固体表面 / ケイ素カチオン / モンモリロナイト / 協同触媒作用 / 有機塩基 / 炭素-炭素結合形成反応 |
Research Abstract |
平成24年度の研究では、モンモリロナイト表面に形成されるケイ素カチオンの新たな触媒作用として、アリルシリル化反応の水による大幅な促進効果を見出した。例えば、クロロスチレンとアリルシランとの反応では、わずかな量の吸着水の存在によって反応速度が60倍に向上した。吸着水が存在すると様々なアルケンのアリルシリルカ反応が15-60分で完結し、高収率で目的生成物が得られた。このような促進効果は、シリカアルミナやアンバーリスト等の他の固体酸触媒では確認されず、モンモリロナイトに特有なものであることが分かった。モンモリロナイト表面で形成される特殊な構造のケイ素カチオン種が水によって安定化されるためと考えられる。 さらに、有機塩基とカチオン性金属種との固体表面における新たな協同触媒作用を見出した。有機塩基とPd錯体を同一固体表面に共存させた触媒では、Pd錯体のみを固定したものと比べて、Tsuji-Trost反応における活性が向上することが分かった。この理由が、Pd種がアリル化剤を、有機塩基が求核剤をそれぞれ活性化する協同触媒作用の発現によるものであることを、固体NMR等の分光学的手法を用いて明らかにした。この触媒は様々な1,3-ジカルボニル化合物およびフェノール誘導体の反応に適応可能であった。さらに、Pd基準の触媒回転数は1000回以上であることを見出した。 加えて、金属錯体の新規触媒作用として、特殊な構造のジホスフィン配位子を有する銅ヒドリド錯体が二酸化炭素の変換反応に有用であることを見出した。本申請研究の課題である新反応の開拓のために、二酸化炭素の新規変換反応をも視野に入れて今後研究を推進する予定である。 上記の研究成果をもとに、平成24年度は査読付き投稿論文発表4件、国際会議発表4件(招待講演1件)、国内学会発表5件を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究では、当初の計画通り、新たな触媒の調製を行うことができた。これに加えて、ケイ素カチオンの新たな触媒作用や、有機塩基と金属錯体を組み合わせることによる協同触媒作用の発現を見出した。以上より、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の研究では、今年度新たに調製した触媒を用いて、新反応を含めた様々な反応を行うことにより、触媒作用の特長を明らかにする。加えて、固体NMR等の分光学的手法を駆使して触媒の詳細な構造を調査する。触媒反応・構造解析によって得られた知見から、さらなる高機能触媒の開発へとフィードバックする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究では、限られた種類の触媒を用いて反応の検討を深く掘り下げることができた。次年度の研究では、今年度の触媒反応で得られた知見を活かして、様々な触媒を調製する。主にこれらの触媒調製のために当該助成金を使用する予定である。
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Research Products
(13 results)