2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24686094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 哲志 東京大学, 先端科学技術研究センター, 講師 (80398106)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞 / 刺激応答性材料 / ケージング / 光分解性保護基 / 細胞接着 / 交互積層法 / ヒドロゲル / 再生医療 |
Research Abstract |
近年、ips細胞等の分化万能細胞から目的の細胞種に分化誘導する方法が確立し、細胞移植療法や再生医療などの発展が大いに期待されている。しかし、細胞の局在や機能を制御する技術が不十分であり、細胞が本来生体内で時空間特異的に発揮する機能を人為的に引き出せていないのが現状である。そこで、本研究では、細胞を刺激応答性の殻(ナノシェル)で覆い、刺激を与えられて初めて機能を発揮するような「ケージド細胞」を調製し、細胞機能の新しい制御法を開発することを目的とした研究を行った。 光応答性のナノシェルの材料として、細胞適合性の高い光溶解性ヒドロゲルを開発した。四分岐のポリエチレングリコール(PEG)鎖の末端に光分解性リンカーを介してビオチンを修飾したポリマー(PB-PEG4)を、ビオチン-ストレプトアビジン(SA)相互作用によって架橋してゲルを作成した。このゲル中に細胞を包埋しても細胞は生存可能であり、さらに、光照射によってゲルを溶かして細胞を取り出しても、細胞毒性は見られなかった。次に、このゲルでマイクロサイズの粒子を被覆する技術を開発した。市販のSA修飾マイクロビーズに、PB-PEG4と蛍光標識したSAとを交互積層したところ、積層に応じて粒子径が増加し、粒子の蛍光が増した。また、この被覆した粒子に光を照射したところ、積層前の粒子径および蛍光に戻った。これらの結果より、マイクロサイズの粒子を光溶解性のシェルで覆い、光照射によってシェルを溶かすことに成功した。また、同様の表面を包むコンセプトで酵素や細胞の機能を制御できることを示す研究成果も得た。以上のように、ケージド細胞を調製するための基盤技術の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画においては、平成24年度に、上記の基盤技術の開発と共に、ケージド細胞の調製法の開発も計画していた。実験計画どおりに、ヒト子宮頸がん細胞株HeLa細胞を光分解性のナノシェルで覆い、HeLa細胞の基板への接着を制御することを試みた。しかし、マイクロビーズを被覆した際と全く同様に交互積層法を行ったが、HeLa細胞の接着を完全に制限できるほどのシェルを細胞表層上に構築することが出来なかった。そこで、現在、より厚みのあるシェルを作成するために、SA一分子ずつの積層ではなく、よりマクロなSA集合体を積層するための検討を行っている.以上の理由から、研究計画に比べて、到達度はやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
まず、細胞の表層を十分に覆い尽くすことができる厚い刺激応答性シェルの被覆法の開発に注力する。被覆法の開発後、光応答性シェルで被覆した血管内皮細胞を用いて、マトリゲル担体上で血管内皮細胞のパターニングを行い、血管様構造のパターニングを行う。また、酵素や光で分解するケージド樹状細胞を調製し、腫瘍細胞の貪食の外部制御を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
刺激応答性シェルの開発に必要なポリマーやペプチドといった消耗品を購入する。また、動物細胞実験およびその解析に必要な消耗品を購入する。シェルの材料となるポリマーやペプチドの精製を促進するため、液体クロマトグラフィーシステムも購入する。また、前年度の成果を発表し、細胞の外部制御技術についての情報を収集するため、国内学会への参加旅費も計上したい。
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Research Products
(16 results)