2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24686098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
太田 朋子 北海道大学, 大学院・工学研究院, 助教 (30373020)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヨウ素-129 / 海藻 / 地圏物質移動 / AMS / 環境放射能 |
Research Abstract |
ヨウ素-129は半減期1570万年の放射性核種であり、長半減期の物質循環のトレーサーとして着目されている核種である。人間活動が活発化される前のヨウ素-129の起源は天然由来のみであったが、戦後の人間活動により莫大なヨウ素429が地圏・海洋圏表層に降下したと考えられる。 2012年度は、過去10年の海藻試料に刻印されたヨウ素-129の実測、および福島原子力災害で放出されたヨウ素-129を指標として以下の研究成果を得た。 1)海藻中のヨウ素同位体比は、2011年3月以降の福島の海藻からは原子力災害以前の100倍高い値が観測された。一方、2011年に採取された福島起源のヨウ素-129は原子力災害事故以前の海洋環境中の同位体比より高いものの、イギリス・再処理工場周辺の海水中のヨウ素-129の同位体比より2桁以上低く、原子力災害より再処理工場稼働に伴う環境負荷のほうが明らかに優勢であった。 2)福島第一原子力災害より放出され降水中にwashoutされた放射性ヨウ素の化学形は全て陰イオン交換態であることがわかった。また、従来まで地圏表面の不飽和土壌中のヨウ素-129は有機物に多く付着していると考えられていたが、地圏に降下したフレッシュなヨウ素-129の化学挙動の観測を行ったところ、地表面に降下1年程度の不飽和層のヨウ素-129は、Fe/Mn酸化物態に主に存在していることがわかった。これは、ヨウ素-129が地表降下直後はFe/Mn酸化物態に主に存在しているが、長い時間経過とともにヨウ素-129の形態が有機物態に移行する機構が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は2000年代の海藻を中心に分析を行い、原子力災害前後の海藻中のヨウ素同位体比の評価を行った。さらに、陸域に降下した土壌中のヨウ素-129の分析も完了しており、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
再処理工場が稼働された1970年代から現代までの海藻試料中のヨウ素-129,炭素-14の測定を行い、再処理稼働に伴う海洋環境への応答性を調べる。H24-H26年で得られた海藻試料のデータを基に、ガス状の炭素-14とエアロゾル付着性のヨウ素-129の放射性同位元素の海洋生物に刻まれた履歴を整理し、化学形態が異なる放射性核種の人間活動の影響と海洋生物への応答性を明らかにする。H24-26年までに取得したデータを基に、戦前および戦後そして原子力災害までの海洋環境における人間活動の履歴と影響の度合いをヨウ素-129と炭素-14の変動を通して明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の人件費および装置の使用料の見積もり額が計画当初の額を超過した状況にあるため、直接経費次年度使用額が生じた。 試料中のヨウ素同位体の化学分離は北海道大学で行うため、化学分離精製に必要な試薬類・消耗品が必要となる。また、AMS測定は東京大学・MALTにて同位体測定を行うため、北海道一東京までの旅費が必要となる。また、本研究を補佐する技術補佐員の人件費、および成果公表のための論文別刷費用などが必要となる。
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