2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24686098
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
太田 朋子 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30373020)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヨウ素-129 / 環境放射能 / 海藻 / AMS / セシウム-137 |
Research Abstract |
人間活動の発展に伴い環境中に放出された人為起源の放射性核種は、世界各国の共有財産である大気・海洋に放出され続けている。さまざまな人間活動に伴う地圏および海洋環境への負荷経時変化を定量化するために、海藻試料に刻印された放射性核種(ヨウ素-129、セシウム-137)と陸上樹木中の放射性核種を実測し、人間活動に伴う影響の変動情報を得ることを試みた。H25年度は、核実験以降の海藻試料、雪および原子力災害後の福島周辺の土壌・樹木中の放射性核種の調査を行い、以下の結果を得た。 1) 本研究では過去の海洋環境が刻印されている海藻を用いて過去の海洋環境中のヨウ素-129濃度を再現することを試みているが、海藻試料の多くは北海道で採取されたものを対象としている。北海道は北方寒冷地であり本州と気候が異なるため、ヨウ素-129の降下は、大気中のヨウ素-129が雪にwashoutされ、海洋圏・地圏にfalloutしたものが主となると考えられる。北海道の浅層地下水、河川水、雪のヨウ素同位体比(I-129/I-127)を加速器質量分析計で高感度分析を行い、近年の北海道周辺におけるヨウ素-129の降下量の基礎情報を得た。 2) 土壌試料中のヨウ素-129、セシウム-137の連続抽出を行い、ヨウ素-129およびセシウム-137の化学形態を実測したところ、ヨウ素-129は酸化物態に多く存在し、セシウム-137はほとんど鉱物中に含有されていた。 3) 森林の放射性セシウムの環境動態解析を行い、樹木中の放射性セシウムの取り込み経路に関する基礎情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
海藻の分析は順調である。さらに、近年、北海道に降下した雪中のヨウ素-129の分析も完了しており、当初の計画通りに研究は遂行されている。
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Strategy for Future Research Activity |
核実験前のヨウ素同位体比より、天然起源のヨウ素129を明確にし、人為起源のないバックグランド値とH24年度に測定を行った原子力災害後の値の比較を行う。次に核実験最盛期前後(1950-1970年代)の海藻試料中のヨウ素129と炭素14の測定を行い、核実験によるヨウ素-129および炭素-14による海洋への応答性を明らかにする。 H24-26年までに取得したデータを基に、戦前および戦後そして原子力災害までの海洋環境における人間活動の履歴と影響の度合いをヨウ素-129と炭素-14の変動を通して明らかにする。 H22年度より北大総合博物館の協力を得て取得した核実験前の海藻のヨウ素同位体比データ数点との比較を行う。海藻分類学による海藻の特性や土壌コアサンプルの地質・鉱物学・水文学的知見・などの各分野の研究者とともに連携をとり、議論を行い、核実験まえから現在までの放射性ヨウ素同位体比および放射性炭素同位体比より、核実験・原子力施設の稼働そして「原子力災害」という人間活動が環境に与えた影響の大きさを明瞭に評価できる指標を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アルバイトの退職に伴い、人件費および他研究機関で実験を行うための旅費に余剰ができたため。外注を予定していた測定があったが、所属機関の測定機の使用で、研究遂行が可能であったため、次年度使用額が生じた。 研究遂行を加速させるため、ルーティン分析の外注を行う。
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