2013 Fiscal Year Annual Research Report
生態系間相互作用の季節動態:寄生者が引き起こすパルス的資源補償の生態学的意義
Project/Area Number |
24687003
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐藤 拓哉 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30456743)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 寄生者 / 生態系間相互作用 / ハリガネムシ / フェノロジー / 生態系機能 |
Research Abstract |
研究の目的と当該年度の研究計画に則り、京都大学フィールド科学教育研究センター北海道研究林において、前年度に北米河川で実施した実験と同様の研究枠組みで、森林から河川に供給される陸生昆虫類の季節性を人為的に操作する大規模野外操作実験を行った。 すなわち、寄生者を介した陸生昆虫の河川への供給量やそのタイミングに関するこれまでの知見を元に、市販のコオロギを早期(6-8月)と後期(8-10月)にそれぞれ投入する試験区と対照区を設けて、その後の河川生物群集(魚類、底生動物群集、藻類)、および生態系機能(一次生産量、栄養塩吸収量、および落葉分解速度)を継時的に調べた。魚類は早期に投入された陸生昆虫に対して、後期よりも強い成長応答をする傾向がみられたが、陸生昆虫の投入に対する成長応答量や投入期間の影響は北米河川でみられたほど顕著ではなかった。今後、底生動物と藻類群集、および生態系機能の分析結果に基づき、森林からのパルス的な資源供給のタイミングが河川生態系に及ぼす影響の大陸間比較を行うことが課題である。 本研究から得られた知見は、寄生者とその宿主の相互作用の地理的変異がそれらによって駆動される生態系をまたぐエネルギー流の季節性を規定することを初めて示すものである。また本研究は、そのようなエネルギー流の「季節性」が、それを受ける生態系の応答をどのようなメカニズムで規定するかを提示する初めての実証例となる。生態系内外のエネルギー流の季節性については、近年その重要性が理論的に指摘されている。この点で、本研究は季節的な生態系間相互作用の重要性を理解する理論的枠組みを提示することに繋がる可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初3年で計画していた複数の大陸での大規模野外操作実験を2年でほぼ終了している。最終年度については、実験サンプルの分析と軽微なデータ補足をすれば、研究成果を発表できる状況にある。 このため、本事業については、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本事業を通して、森林と河川が相互作用する春から秋にかけて、洪水攪乱を経験するアジアモンスーンの森林-河川生態系は、北米河川に比べると、季節的な資源供給の影響が及ぶメカニズムが多様であるとともに、攪乱によってその影響が見えにくくなることがあるという示唆を得た。 このことは、森林-河川生態系の挙動の一般的な予測に繋がる理解を大陸を超えて可能にするには、解決するべき課題が残ることを意味する。 また、生態系間のエネルギー流を駆動するハリガネムシ類は世界中に分布しており、それらの多様性や個々の種の個体群動態は、森林-河川生態系相互作用の影響を強く受けるはずである。生態系間相互作用と寄生者の多様性維持の関係の解明も、今後の大きな課題と言える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学術研究助成基金助成金の性質上、当該年度内に0にする必要はないと判断し、少額であるが次年度に繰り越した。 最終年度の取りまとめに際して、通信・運搬費等に使用予定である。
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Research Products
(2 results)