2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24687006
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
川上 恵典 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 特任准教授 (40619904)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 色素・光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
光化学系II複合体(PSII)は、植物の水分解・酸素発生反応を行うMn4CaO5クラスターを利用して水分子から電子を得ている。本研究の目的はPSIIの機能を構造生物学的に解析することで植物の酸素発生機構の原理解明を行うとともに、水分子から電子を得る人工触媒の開発に有効な知見を提供するものである。 塩素イオンはPSIIの酸素発生に重要な補欠因子の一つであり、臭素・ヨウ素イオンと置換可能であるが、ヨウ素イオンに置換するとPSIIは酸素発生反応が阻害され、その原因の詳細は不明であった。本研究課題では、高分解能X線結晶構造解析及び各種分光学的解析を行うことで、ヨウ素イオン置換によるPSIIの酸素発生阻害機構の解明を試みた。 X線照射によってPSII結晶内のMn4CaO5クラスターが還元され、その立体構造が変化することが近年議論されていたため、複数のPSII結晶を用いることで1個のPSII結晶あたりのX線照射量を抑えたヨウ素置換PSII結晶のデータ(0.2 MGy。およそ5-10%程度のMn還元が起こっているとされるX線量)の収集を行った。その結果、高X線量データ(以前のデータ)のMn4CaO5クラスターの構造と違いが見られた。そのため、Mn還元量が2%程度まで抑えられる0.1 MGyのX線照射量のヨウ素置換PSII結晶のデータを収集し、そこから得られる構造解析結果と既に収集した分光学的解析データと比較することで、ヨウ素イオンによるPSIIの還元化の議論を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
X線照射によるMn4CaO5クラスターの還元化の議論は、近年他研究グループから精力的に行われているが、X線回折強度データ収集を行うことができるヨウ素置換体PSII結晶の数が少なく、X線照射量を分散してデータを得ることがこれまでできなかった。この問題として、複数の結晶から得られるX線回折強度をそれぞれ一致する必要があり(同型な結晶の作製)、これを一致させるためには培養から精製・結晶化・結晶の凍結条件を全て一致させ、それらの作業を全て手作業で行う必要があったためである。昨年度の研究で、複数のNative-PSII結晶の同型性を高める方法を考案し、ヨウ素置換体PSII結晶でもその方法を試みたところ、X線照射量が0.2 MGyのヨウ素置換PSII結晶データを得ることにようやく成功した。そのため、H27年度に0.1 MGy(Mn還元量が2%程度)のヨウ素置換体PSII結晶のデータを収集し、ヨウ素イオンによるMn4CaO5クラスターの還元化の議論を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
X線照射量を0.1 MGy(Mn還元量を2%程度に抑えた値)に抑えたヨウ素置換体PSII結晶データを収集・構造解析を行い、既に得られている分光学的解析データと比較することで、ヨウ素イオンによるPSIIの還元化と酸素発生阻害機構の詳細についての論文を投稿する。
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Research Products
(11 results)