2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの鉄イオン輸送システムの作動原理と生体内鉄動態の解明
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24687015
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
杉本 宏 独立行政法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 専任研究員 (90344043)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金属イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、鉄イオンがヒトの十二指腸で吸収される際の輸送と酸化還元制御を担う膜タンパク質の結晶構造から鉄獲得の分子メカニズムを解明することを目的としている。H26年度は、ヒト小腸に発現するDcytbの組み替えタンパク質の精製・結晶化・データ収集を昨年度に引き続き行った。Dcytbの電子供与体であるアスコルビン酸(Asc)やその誘導体との共結晶化を行った結果、10オングストローム程度の分解能のX線回折が確認された。モノクローナル抗体フラグメントを利用した結晶化を実施することで結晶の回折分解能の向上を目指した。高い親和性が確認できたIgGについては抗体フラグメント (Fab)の大量調製を行ったが、結晶は現在のところ得られていない。 Dcytbの分子機能を解析するため、Stopped-Flow装置を用いてAscによるDcytbの還元反応を追跡して反応速度論的解析を行った。吸収スペクトルの時間変化を解析した結果、Dcytbの還元速度を4つの指数関数で近似できた。4つの速度定数のうち最も早い反応は明瞭なAsc濃度依存性を示したことからAscの結合がこの反応の律速となっていると考えられる。さらに、同じファミリーに属する植物由来のcytochrome b561のの立体構造とアミノ酸配列の保存性からDcytbでのAsc結合に関わる残基を予測し、3種類の変異体を作製した。それらの変異体の還元反応の測定の結果、解離定数および最大反応速度は変異によって大きく影響を受けたことから、保存されたアミノ酸残基はDcytbにおいてもAsc結合部位であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Dcytbはヒト由来の膜タンパク質でありながら、大腸菌を用いた発現系で活性のあるタンパク質の発現や調製方法を確立してきた。また、低分解能であるが結晶化に成功している点は順調に進展してきた。しかし、Dcytbのような膜タンパク質結晶の分解能の向上は様々な条件の最適化を試行錯誤で行う作業が多くて複雑なため、現在のところ構造解析に必要な分解能のX線回折データを収集できていない。分解能の向上に有効であると考えている抗体のフラグメントの処理方法の確立およびその精製作業を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質の調製と結晶化を引き続き行う。調製した結晶のX線回折データ収集とデータ処理などの構造解析を進める。分解能の向上をめざしてT4リゾチームなどのタンパク質との融合タンパク質として発現させて結晶調製を行う。また、変異体のデザインと調製を行って機能解析を進める。これらのタンパク質の発現・精製・結晶化作業やモノクローナル抗体の調製のための作業や物品の購入に予算を充てる計画である。
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Causes of Carryover |
結晶分解能の向上を目的として抗体フラグメントを調製するにあたり、モノクローナル抗体の発現細胞の樹立には成功したが、抽出した抗体のフラグメント化およびその後の精製および結晶化作業が当初の予定よりも遅延している状況であるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に複数種類の抗体フラグメントを利用した結晶化実験を行う。そのために必要な複数クローンの抗体試料調製実験に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)