2013 Fiscal Year Annual Research Report
高次生物における1細胞内全遺伝子発現の網羅的1分子計測
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24687022
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
谷口 雄一 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, ユニットリーダー (90556276)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 1分子・1細胞生物学 / 生物物理学 / システム生物学 / 超高感度顕微鏡技術 / 微細加工技術 / 生命反応の物理 |
Research Abstract |
本研究では、高次生物(酵母、ヒト細胞)において1つ1つの細胞の個性が生まれるメカニズムの解明を目指している。我々はこれまでに、原核生物である大腸菌を用いて、1細胞レベルでのタンパク質の発現を1分子レベルで、かつリアルタイムで定量化するシステムを開発してきた(Taniguchi et al., Science, 2010)。しかしながら、このシステムをそのまま高次生物に応用できるかというと、実はそうではない。高次生物には厚みがあるため、一般的に用いられる広視野型の蛍光顕微鏡で観察した際には焦点面外からの高い背景光が発生するためである。 我々はこの問題を解決するため、高次生物のタンパク質発現計測に適した蛍光顕微鏡システムを開発した。厚みがある細胞でも低い背景光で観察できる顕微鏡にシート照明顕微鏡があるが、一般的にこの顕微鏡は、生物試料をゲル中に埋めなければ観察が行えないため、ライブセル観察を行うのが難しいという欠点があった。我々は、光学系を改良することにより、一般的に細胞観察に用いられるシャーレ上の細胞に対してでもシート照明による観察を適用することができる、新しいシート照明顕微鏡を開発した。 我々は実験系のテストのために、複数の生物試料に対して観察を行った。まず酵母に光励起型の蛍光タンパク質であるmEos3.1を発現させ、微弱なUV励起光を用いて観察を行ったところ、蛍光タンパク質1分子による明瞭な蛍光スポットを観察することができた。さらに、微小管・ヒストンと蛍光タンパク質を融合させた線虫株の初期胚の観察を行い、実際にゲル中でなく水溶液中でも胚発生の様子が観察できることを確認した。一方で、蛍光ビーズを計測してシート照明の厚みを測定したところ、2.5ミクロンと求められ、十分に背景光が低くなっていることが確認できた。現在、本システムを用いて酵母・動物細胞における遺伝子発現定量計測を行うための準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は酵母・動物細胞の計測を行う予定であったが、現段階でほぼ達成し、当初想定していなかった線虫の発生過程の計測まで研究が発展しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は現在のところ順調に進捗しており、今後も申請時の研究計画の流れに沿って研究を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度においては、機種選定を次年度に行った方が適切と判断される物品があったため、基金分の研究費を次年度に持ち越しとしている。 申請時の研究方針に従って研究費を使用する。持ち越し分の研究費の使用と、研究計画に沿った予算の執行を適切に行っていく。
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Research Products
(11 results)