2012 Fiscal Year Annual Research Report
音声生成運動能力のサルモデルの創出と話しことばの霊長類的基盤に関する総合的研究
Project/Area Number |
24687030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 剛 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (80452308)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 霊長類 / 音声言語 / ヘリウム音声 / 社会学習 |
Research Abstract |
言語の音声コミュニケーションである「話しことば」の生物学的基盤の進化プロセスを解明するため、音声生成の運動能力に関してヒトと体系的に比較参照できるサルモデルを創出するため。ヒトは、話者の意図する種類の音を意図する系列で連ねるために、音声生成の運動を随意に制御する能力をもつ。本年度は、ヘリウム音声分析の手法を確立するためにし、テナガザルのヘリウム音声データを音響学的に解析するとともに、工学的シミュレーションを交えて、テナガザルのソング音声生成のメカニズムが、ヒトのソプラノ歌唱と同様であることを示した。このようにして確立された分析手法は、事後の実験にも適用できる。本研究は、まず、マカクザルを対象に、ヘリウム濃度の増減で声道の共鳴特性を操作し、発せられた音声の音響学的分析によりヘリウムの影響以外の特徴の変化を見出し、発声と構音運動の随意制御性を検証する実験をする。平成25年度は、専属の研究補助員を雇用し、京都大学霊長類研究所飼育のニホンザル2頭に対して、レーズン等を好子として視覚的キューに対して音声を発するようオペラント条件付けを行う馴致訓練を実施した。うち、1頭では、本格的な訓練開始から約10ヶ月で条件付けが完成し、ヘリウム実験へと進むことができるようになった。もう1頭も、順調に訓練が進んだ。これら2頭の訓練進捗の差異について検討したところ、条件付け理解を進めるためには社会学習の導入が効果的かもしれないという予見に至ったので、平成26年度より社会学習を介した音声訓練を実施する計画を立てた。並行して、ヘリウム実験とX線テレビ撮像を実施するためのモンキーチェアの設計を進め、改良を重ね、完成した。また、コモンマーモセットを使ったヘリウム実験の準備のため、対象個体の選定と海外共同研究者との実験設計を打ち合わせし、平成26年度からの本格開始の準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、対象個体の馴致訓練が進んでいる。また、実験設備の整備も、一部に納品の若干の遅れが生じたが、完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
ニホンザルについては、馴致訓練が完了した個体よりヘリウム音声実験を実施し、続いてX線テレビ撮像のためのモンキーチェアーへの馴致と音声発声の再訓練を実施する。コモンマーモセットについては、専用ケージができ次第、ヘリウム音声実験を実施し、海外共同研究者とその発声機構の詳細な分析実験を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、ヘリウムガス実験のためのガスチャンバーの制作が若干遅れたため、その予算が翌年度に繰り越しとなった。平成25年度初旬に完成予定であるので、当初計画通りその経費へと充当する。
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[Journal Article] Soprano singing in gibbons2012
Author(s)
Hiroki Koda, Takeshi Nishimura, Isao T. Tokuda, Chisako Oyakawa, Toshikuni Nihonmatsu & Nobuo Masataka.
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Journal Title
American Journal of Physical Anthropology
Volume: 149
Pages: 347-355
DOI
Peer Reviewed
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