2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒュウガナツ‘西内小夏’の非還元花粉形成機構の解明とそのカンキツ育種への利用
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24688003
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
本勝 千歳 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30381057)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 園芸学 / 果樹 / カンキツ / 倍数性 / 非還元花粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はヒュウガナツ‘西内小夏’で確認された非還元花粉の形成過程の解明と,その育種的利用を検討するものである.非還元花粉の形成過程については,親植物‘西内小夏’から非還元花粉へのDNAマーカーの遺伝様式をもとに明らかにするというアプローチを考え,遺伝様式の解析に利用可能なSSRマーカーの選抜,ならびに非還元花粉から直接的にDNAを抽出し,花粉一粒のジェノタイピング手法を開発してきた.本年度は,この手法を用いて,非還元花粉を実体顕微鏡下で花粉径をもとに選択し,遺伝子型のデータを獲得してきた.DNA抽出を行った花粉粒272個に対して,遺伝子型情報が獲得できた花粉が174個,その内同一連鎖群上に存在すると考えられている6つのSSRマーカーで遺伝子型情報が得られたものが64個あった.これらをもとに,各遺伝子座における親植物のヘテロ接合性の遺伝割合を差出したところ,概ね50%以上の割合でヘテロ接合性が遺伝していた.これは昨年度までに得られた結果と一致し,非還元配偶子の形成過程での主要な2つの様式(FDRとSDR)の中で,FDRにより一致するものであり,‘西内小夏’における非還元花粉形成はFDRによって行われる可能性が高いと考えられた. また,非還元花粉を利用して,救助培養による三倍体個体の獲得を目指し,救助培養における最適な胚の状況について検討した.‘西内小夏’ב西内小夏’の自家受粉果において受粉後12週から18週にかけて果実を採取してその中から,胚を摘出して培地に植え付けその後の生存率および発芽率を調査した.その結果,魚雷型あるいは心臓型の状態の胚でもっとも発芽率およびその後の生存率が高くなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において目的にしている‘西内小夏’非還元花粉形成過程の解明については,花粉一粒のジェノタイピング法の開発およびそれによるジェノタイプデータの蓄積により,FDRによって行われていることが高いことが示され,また非還元花粉を利用した倍数性個体の獲得についてもいくつかの倍数性個体が得られていることから,現在のところ順調に進んでいると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
DNAマーカーを用いた非還元花粉形成過程の解明について,本年度は花粉一粒のジェノタイピングとは異なったアプローチによって,解析を行う.カンキツ種子の内種皮組織が胚乳由来であるという研究結果が報告されており,胚乳由来なので,2倍体実生では3倍体,4倍体実生では6倍体を示す.‘西内小夏’自家受粉によって得られた正常種子は非還元花粉と非還元卵が受精して出来た4倍体個体であると考えられており,この内種皮組織と,胚を発芽させて得られた実生からそれぞれDNAを抽出し,SNPマーカーを用いてそれぞれで保持されるマーカーを量的に解析することによって,非還元花粉,非還元卵それぞれの遺伝子型を一意的に決定することが出来る.よって今年度は,本手法を用いることによって,‘西内小夏’における非還元花粉および非還元卵の形成過程に関する知見を得る. ‘西内小夏’を交配して得る倍数性個体の獲得については,継続して行い,さらに多くの植物体の獲得を目指す. また,これまでにモデル植物において非還元配偶子形成や減数分裂に関与すると考えられているいくつかの遺伝子(AtPS1,JASON,OSD1,SoloDancer,DYAD)のヒュウガナツにおけるホモログを単離しており,‘西内小夏’の花粉形成時におけるそれらの遺伝子の発現をリアルタイムPCRによって解析し,それらの遺伝子が‘西内小夏’の非還元花粉形成に関与しているかを確認する.
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Causes of Carryover |
本研究において使用した花粉一粒のジェノタイピングについては,約40μm程度の花粉を実体顕微鏡下で採取するために,非常に細やかな作業が必要である.当初は,この作業をサポートするためのマイクロマニュピレーターの購入を検討していたが,実験担当者が技術的にこれを必要としなかったために導入の必要性が薄れた.よってこれに使用する目的であった金額を次年度使用額となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究においては,研究員を雇用して実験に取り組んでもらっている.今年度は雇用日数を増やすために人件費の増加が見込まれる.次年度使用額については,雇用研究員の雇用経費とともに物品購入費として,新たに交付される経費と合わせて使用することを考えている.
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Research Products
(2 results)