2012 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯林の断片化がフタバガキ科樹木の雑種化に与える影響の解明
Project/Area Number |
24688017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
田中 憲蔵 独立行政法人森林総合研究所, 国際連携推進拠点, 主任研究員 (30414486)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フタバガキ科樹木 / 熱帯林 / 断片化 / 雑種 / マレーシア / Shorea属 / ブキティマ / 塩基配列 |
Research Abstract |
調査候補地として、マレー半島の森林保護区約10箇所で予備調査を行い、パシルパンジャン、タンジョントゥアン、ウルランガット森林保護区などで雑種個体の密度推定を開始した。フタバガキ雑種個体と両親種の挿し木栽培も行ない、雑種個体の活着率が悪いことがわかった。フタバガキ科の巨大高木セラヤ(Shorea curtisii)の集団遺伝的な解析も行った。この樹種は半島マレーシアからボルネオ島まで広く分布している。セラヤはShorea属の中で種間雑種をつくることが明らかになっており、この研究での主要な調査対象樹種である。フタバガキ科樹木の雑種形成を調べる上で、セラヤ自身がどの程度地域間で遺伝的な変異を持っているのか明らかにする必要がある。そこでマレー半島とボルネオ島からセラヤ集団を採集し、遺伝的変異の程度と集団間の遺伝的分化の実態を調べた。 調査では、葉緑体DNAの塩基配列多型に加え、3核遺伝子座(PgiC、GapC、GBSSI)の塩基配列を11集団、161個体について決定した。これらの配列データを基に、遺伝的変異量を表す統計量であるθを推定し、集団間で比較した。マレー半島における各集団のθは、0.0063-0.0102の範囲であったが、集団間の値に有意な差は検出されなかった。ボルネオ島の2集団のθはそれぞれ0.0019と0.0011と推定され、マレー半島集団の値より3-9倍ほど低かった。これらの結果から、葉緑体と核DNAのいずれにおいても、(1)遺伝的変異はマレー半島の方がボルネオ集団より高いこと、(2)遺伝的分化の程度はマレー半島-ボルネオ島間で著しく高いが、各地域集団問の分化は比較的低いことが明らかになった。したがって、特に遺伝的分化の進んだ地域間で種子や苗の人為的な移動が、セラヤの遺伝的多様性を破壊する危険性があることが分かった。またこれらの成果は学術雑誌Biotropicaなどで公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査候補地の選定はおおむね順調に行うことが出来た。雑種個体の挿し木栽培は難しいことが分かり、技術面での改良が必要と考えられた。また、対象樹種であるセラヤ地域間の集団遺伝的解析を行い学術誌上での成果の公表が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
調査候補地となっている森林保護区での調査許可の取得を進め、マレーシアプトラ大学や国際農林水産業研究センターの研究協力者と稚樹センサスプロットの設置などの現地調査を行う。雑種個体や両親種の遺伝特性や生態特性をまとめ成果の公表に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
継続課題のため、年約3回、マレーシア、シンガポールの現地調査を行うための旅費、レンタカー代金など現地経費として使用する。移動距離などを記録できる簡易GPS、光合成、DNA解析に必要な薬品等の物品購入費として使用する。
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Research Products
(5 results)