2013 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯林の断片化がフタバガキ科樹木の雑種化に与える影響の解明
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24688017
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
田中 憲蔵 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (30414486)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フタバガキ科樹木 / 熱帯林 / 断片化 / 雑種 / マレーシア / Shorea属 / 浸透交雑 / ブキティマ |
Research Abstract |
東南アジアの熱帯雨林で優占するフタバガキ科サラノキ属からは、種間雑種が複数個体見つかっている。しかし、これらの種間雑種と両親種との戻し交雑による種間での遺伝子流動が起こるかは不明である。そこで、マイクロサテライトDNA解析によって、サラノキ属雑種と近縁種間の浸透性交雑を調査した。 シンガポールブキティマ自然保護区に生育するShorea curtisii、S. leprosula、S. parvifolia、および雑種の成木集団から、葉を採集しDNA分析に用いた。また、自然保護区内に方形区を2カ所設置し、対象種の稚樹の葉サンプルを採集した。これらの個体について、遺伝子型と各個体の種子親種を決定した。 成木個体のクラスター分析を行った結果、3種は異なるクラスターに属し、互いに明確に区別することができた。雑種個体はすべて異なる二つのクラスターを持つキメラであると推定された。プロット1からは、葉形態によって雑種稚樹が見つかり、クラスター解析の結果からもS. curtisiiとS. leprosulaの種間雑種であることが示された。また、プロット1で見つかった雑種個体の種子親種は全てS. curtisiiであった。プロット2で見つかった稚樹の中には雑種が種子親と考えられる個体があり、一部は両親種との戻し交雑の可能性が示された。以上の結果から、サラノキ属は雑種を介して他種の遺伝子浸透が生じ、純粋な種を保全する際に問題になる可能性が示された。これらの成果は日本熱帯生態学会等で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、調査地の選定を進め、現地調査を実施した。一部の成果については日本熱帯生態学会などで公表に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、マレーシアプトラ大学、シンガポール南洋工科大学、国際農林水産業研究センターの研究協力者と稚樹センサスプロットの設置などの現地調査を行う。雑種個体や両親種の遺伝特性や生態特性をまとめ成果の公表に努める。2014年3月頃からフタバガキ科樹木の開花が観察されており、結実があれば実生の新規加入率などの測定を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度に、DNAなど化学分析を一部行うことができなかったため。 H26年度にH25年度に予定していた実験を行い予算を使用する。
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Research Products
(7 results)