2014 Fiscal Year Annual Research Report
アジアの農漁村における防災・復興に関する国際比較研究
Project/Area Number |
24688023
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高篠 仁奈 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80507145)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 農業経済学 / 開発経済学 / アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、災害による経済ショックへの対応と共同体、組織の役割という視点から日本と途上国の事例を比較し、防災・復興時に農漁村の共同体や社会関係資本、NGOはどのような役割を果たしたか等の課題について回答を求める。 平成26年度は、前年度までの調査研究に引き続き、途上国の災害事例としてインドネシア東ジャワ州の工業災害(シドアルジョ泥流災害)とバングラデシュ南西部のサイクロン災害について調査研究を実施した。特に、インドネシアの事例ではNGOの役割の焦点を当てて、バングラデシュの事例では災害が教育に与える影響に着目した研究を進めた。 具体的には、夏季には、7月から8月にかけて、バングラデシュ南西部のインドとの国境近くに位置する、クルナ管区シャッキラ県の小学校を対象として災害の教育への影響に関する現地調査を行った。30の小学校と地方政府(郡、市)、校区の集落を対象として質問票を用いた聞き取り調査を行い、サイクロン災害からの復興状況や、防災教育への取り組みに関するデータを収集した。調査では、政府やNGOの支援が、最も深刻な被害を受けた地域(市街地から離れた遠隔地)には十分に行き届いておらず、比較的支援しやすい地域に偏っている現状が調査では観察された。このような観察がデータと整合的であるかを現在分析中であり、成果は平成27年中に論文にとりまとめる予定である。 インドネシア、シドアルジョの事例については、前年度までに行った調査に基づいた分析と論文執筆を進め、NGOと政府との連携について、国際学会で成果報告を行い、専門家と意見交換を行うことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、予定通り、バングラデシュにおける災害が教育に与える影響について、詳細な現地調査を実施することができ、十分な情報・データを収集することができた。また、バングラデシュでの調査を通して現地の専門家と議論する機会があり、今後の新たな研究や連携につながるネットワークを得ることができた。さらに、インドネシアの事例について、国際会議での成果報告を通じて、同様の問題意識を持つ研究者と議論を行うなど、研究目標の一つとして掲げていたネットワーク形成という観点からも十分な成果を得ており、達成度についてはおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、引き続き災害による経済ショックへの対応と共同体、組織の役割という視点から、①バングラデシュの事例について、昨年度の調査結果のとりまとめ、②今年度の現地調査の実施、③途上国事例と日本国内事例との比較、を中心に調査研究を実施する。 具体的には、まず、昨年の現地調査で収集した教育への影響に関するデータの分析と論文作成を行う。夏季には、同地域の災害避難者のスラム街移住状況について補足調査を行う。さらに、昨年までに調査を行ったインドネシアの泥流災害での事例も含め、途上国の事例と日本国内の経験との比較を行い、成果をとりまとめる。 なお、現地での聞き取り調査等については、相手方の同意を得た上で実施する。
|
Causes of Carryover |
データ入力を依頼するために謝金を使用する予定であったが、共同研究者と分担して入力を行うことができたため、予定よりも使用額が少なくなった。また、書籍などの物品費が予定よりも購入が少ない。これらの理由から次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、主にバングラデシュでの現地調査のための旅費や、現地での調査運営補助などの謝金、データ入力および資料整理への謝金のために使用する予定である。平成26年度の未使用分は、調査のデータをより拡充するための費用増加分に使用する他、書籍の購入あど、研究に必要となる物品の購入に充てる。
|