2013 Fiscal Year Annual Research Report
アンキリンによるイオンチャネルの膜上集積機構の解明
Project/Area Number |
24689012
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 祐一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20532980)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | イオンチャネル / アンキリン / 構造機能連関 / 興奮収縮連関 / 軸索起始部 / 跳躍伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
(全体構想)心臓の拍動や脳の活動は細胞膜の電気的興奮によるものである。その電気活動を統制するイオン輸送膜蛋白質の細胞膜上の局在と機能を制御する分子基盤を明らかにする。 (具体的目標)神経細胞・心筋細胞の電気的興奮性の要である電位依存性イオンチャネルは細胞膜上に裏打ち蛋白であるアンキリンGと結合することで限局・集積して発現する。本研究では、「アンキリンGはどのように細胞膜に接着するのか?」「アンキリンGによりイオンチャネルはどのように集まり、どのように機能するのか?」を明らかにする。 アンキリンG結晶構造の解析、分子間インターラクションの解析、細胞の機能解析を統合的に用い種々の側面から作動原理を明らかにする。 これまでの研究から神経細胞・心筋細胞膜においてアンキリンGは細胞膜の特定の部位に接着し、イオン輸送体(Nav、Kv、CNG、Na+/K+ポンプ)と結合し限局させ膜興奮制御に有利に働くことが報告されて来たが、その構造基盤・結合様式は全く明らかにされていない。 本年度は、昨年度解析することに成功した、アンキリンGの脂質結合部位の結晶構造を用いて、分子動力学的解析により、アンキリンGと細胞膜との接着機構を解析した。アンキリンGと細胞膜脂質二重膜との結合親和性を表面プラズモン法を用いて解析した。さらに、アンキリンGは酸化されることで2量体化することを見いだし、結晶構造解析法を用いて、高分解能の構造解くことに成功した。続いて分子動力学的解析により酸化アンキリン2量体の膜への脱接着機構を解析した。アンキリンGがイオン輸送体と結合していると考えられている、脂質結合部以降の分子後半部分のタンパク質を精製し結晶を作成することに成功した。大型放射光施設にて回折実験を行い、低分解能ながらタンパク質回折像を得ることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
蛋白質の結晶構造を解析することは、蛋白質の発現、精製、そして結晶化が困難なため、計画通りの進展は一般に難しい。ところが、本研究では、本年度すでに2種類の機能ドメインの結晶を作成することに成功し、回折実験により蛋白質結晶であることを同定し、うち1種類の構造を高分解能で解くことに成功した。さらに、アンキリンGが酸化還元により構造が変化するというこれまで全く知られていない現象を見いだし、幸運にもその結晶構造を解析することに成功した。 分子動力学的手法はコンピュータの計算速度の限界から、長時間のシミュレーションを回数多く行うことはこれまで不可能であった。本研究では、粗視化シミュレーションを行い、1マイクロ秒の長時間のシミュレーションを100本行う事が可能となった。これにより、これまで取り組まれていなかった脂質修飾蛋白質が細胞膜へ接着する機構の分子動力学計算が可能となり、その機構を明らかにすることに成功した。 このように、当初の計画以上に進展しており、今後の進展も大いに期待出来る。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度解析に成功した、アンキリンGの結晶構造解析、分子動力学的解析により明らかになった、重要な蛋白質構造の情報を基に、細胞機能の解析に取り組む。アンキリンG脂質接着表面を構成する重要な残基に変異を導入し、海馬から初代培養した神経細胞にステーブルに発現させ、アンキリンGの局在、イオンチャネルの局在を組織学的に蛍光顕微鏡下に観察する。電気生理学的機能解析も並行して行ない、イオンチャネルが膜上に局在することで機能がどう変わるのかを明らかにする。パルミトイル化を介した膜への接着機構、膜への局在、そして機能発現を原子レベルで明らかにする。本年度明らかにした酸化還元によるアンキリンG蛋白質の機能的意義を細胞機能を解析することにより明らかにする。
|
Causes of Carryover |
平成25年10月、当初の予想に反し、アンキリン(ANK)の膜上チャネル集積機構にアンキリンが膜脂質と結合する可能性が明らかとなった。研究遂行上、この現象(アンキリン-脂質間結合)の本質を見極めることが重要であることから、昨年決定したアンキリンの構造情報を利用した情報学的解析と細胞を用いた細胞生理学的解析を行う必要性が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬購入に1000000円、実験動物の維持に500000円。 国内学会参加旅費に100000円。実験補助員の雇用に2000000円。 その他印刷出版費に100000円。
|
Research Products
(14 results)
-
-
[Journal Article] X-ray Crystal Structure of Voltage-gated Proton Channel2014
Author(s)
Takeshita K., Sakata S., Yamashita E., Fujiwara Y., Kawanabe A., Kurokawa T., Okochi Y., Matsuda M., Narita H., Okamura Y., Nakagawa A.
-
Journal Title
Nature Structural & Molecular Biology
Volume: 21
Pages: 352-357
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-