2012 Fiscal Year Annual Research Report
低分子RNAネットワークのシステム的理解と新たな癌制御アプローチへの応用
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24689018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 洋 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任助教 (00587793)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 低分子RNA / システム生物学 / 癌 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究では、様々な病態における低分子RNAの発現異常の分子基盤となる低分子RNA生合成経路の新規調節機構、および悪性腫瘍との関係を明らかにすることを目的とする。また、内在性RNA間のクロストークに注目し、遺伝子発現制御における低分子RNAの新規作動原理を明らかにし、低分子RNAの作動機構をネットワークレベルでシステム的に理解することを目的とする。マイクロRNA(miRNA)はおもに標的mRNAの発現量を抑制することでその転写後調節機能を発揮していることが最近の研究により示唆されているが、平成24年度では、まず、このmiRNAによる標的mRNAの抑制効果を、癌のトランスクリプトームといった複数の内在性miRNAの発現量が変動する状況に外挿することが可能であるかを検討した。このために、GSEA-FIWE analysis(GFA)という新規解析手法を開発し、この手法により癌のトランスクリプトームにおいて、これまで実験的に検証されてきたmiRNAがmRNA発現に与える負の影響が広範囲に観察されること、この原理を応用して、より頑健な新規バイオマーカーや新規治療標的をゲノムワイド発現解析から抽出できる可能性を明らかにした(Nucleic Acid Res, 41, e62)。また、これまでに、miRNAの生合成機構の制御に関して、MCPIPlと呼ばれる遺伝子が細胞質でribonucleaseとしてmiRNA前駆体のループ部分を切断しmiRNAの生合成を終息させることなどを見出している。平成24年度では、MCPIPIによるmiRNA前駆体の分解を抑制するRNA結合タンパクLaとMCPIP1の関係について、乳癌の遺伝子発現データを解析し、結果として、DicerおよびLaとMCPIP1が拮抗関係にあることを見出した(J Biol Chem, 288, 723-736)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
低分子RNAの生合成機構、および、低分子RNAによる内在性RNAネットワークの制御、両方向からの解析について興味深い知見を得ており、今後の研究の進展が期待できる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
低分子RNAの生合成機構、および、低分子RNAによる内在性RNAネットワークの制御について、興味深い知見を得ているが、研究をさらに進展させるために、次年度では、次世代シーケンサーによる解析なども導入することを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画の進行に伴い、in silicoでの解析を先行した結果、直接経費の次年度使用分が生じている。 次年度では、本年度の結果をさらに発展させるため、次年度の研究費とあわせて有効活用することを計画している。
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Research Products
(28 results)