2013 Fiscal Year Annual Research Report
多層的オミックス解析に基づくシェーグレン症候群発症機序の解明
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24689068
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山田 安希子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (70452646)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自己免疫 / シェーグレン症候群 / 制御性T細胞 / 多層的オミックス解析 |
Research Abstract |
免疫系は「自己」・「非自己」を識別するシステムであり、「自己」に対する免疫寛容を維持しつつ、「非自己」を排除する。免疫寛容が破綻すると、免疫細胞は自己組織を攻撃するようになり、自己免疫疾患の発症を誘起する。この発症に深く関与している免疫細胞画分の一つが、制御性T細胞(Treg)である。Tregは、自己反応性T細胞を抑制的に制御する機能を有した細胞集団であり、このTregの機能によって免疫寛容が維持されている。したがって、Tregに機能不全が生じると、免疫寛容の破綻を招き、様々な自己免疫疾患が発症する。そのため、自己免疫疾患に対して、Tregの機能を回復あるいは増強するという治療戦略は、非常に有効であると考えられている。本研究において申請者は、マイクロアレイを用いたトランスクリプトーム解析、および質量分析を用いたプロテオーム解析を駆使した、「多層的オミックス解析」によって、Tregの機能不全の原因となる分子機構を理解し、さらに治療標的となる分子を同定することを目指す。 申請者はこれまでに、当教室で作製したシェーグレン症候群モデルマウスを用いて、Tregの機能解析を行った結果、Tregの免疫抑制能に異常は認められなかった。一方で、疾患モデルマウスではTregの細胞数が健常マウスと比較して有意に少ないことが分かった。そこで、Tregの細胞増殖能を検討したところ、疾患モデルマウスでは抑制されていることが明らかになった。さらに、Tregの誘導能についても疾患モデルマウスでは抑制が認められた。これらの結果から、本研究で用いたシェーグレン症候群モデルマウスでは、Tregの増殖能や誘導能が抑制されることによってTreg数が減少し、病態発症あるいは増悪を誘導している可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した当初の計画通り、健常マウスおよびシェーグレン症候群の疾患モデルマウスのTreg間における遺伝子発現の相違を、マイクロアレイ法により網羅的に解析した結果、5倍以上の発現レベルの相違を示す遺伝子が複数見つかったため、リアルタイムPCR解析によって検証を行った。また、トランスクリプトーム解析で得られた結果と実際のタンパク質の機能とを比較検討するため、並行して、疾患モデルマウスのTregについて詳細な機能解析を行った。その結果、疾患モデルマウスでは、Tregの増殖能や誘導能が抑制されていることが明らかになった。さらに、サイトカイン産生能について検討を行ったところ、疾患モデルマウスのTregは、活性化した状態では、炎症性サイトカインの1つであるIFN-gの産生が非常に亢進していることが示された。したがって、これらの結果から、本研究で用いた疾患モデルマウスでは、Tregの増殖能及び誘導能の抑制によりTregの細胞数が減少していることに加え、Treg自体が炎症性サイトカインの産生能を有していることが示され、このことが病態の発症あるいは増悪に関与することが示唆された。 このように、Tregを介したシェーグレン症候群発症機序の解明に結びつく結果が得られたことより、現在本研究は順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、定量的プロテオーム解析により、シェーグレン症候群の疾患モデルマウスと健常マウスのTreg間における酸化修飾の相違を網羅的に解析していく。本学には電場型フーリエ変換質量分析装置Orbitrap eliteが2014年1月に設置された。この質量分析機は当初使用予定であった四重極-飛行時間型質量分析計Q-TOF ultimaと比較して、感度および分解能が10倍以上高い。従って、今後このOrbitrap eliteを使用してプロテオーム解析を行う。Orbitrapはハードウェアおよびソフトウェアが、Q-TOF ultimaとは全く異なり、また学内での使用実績もないため、まず解析システムの理解と、解析の条件検討を詳細に行ったうえで、疾患モデルマウスと健常マウスのTregについて、酸化修飾の相違の解析に着手していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究はおおむね順調に進展しているが、計画が若干ずれたため繰越の助成金が生じた。 申請研究費は、質量分析関連試薬、疾患モデル動物の維持管理(滅菌資料、床敷、ケージ、給水瓶などの消耗品)、その他病態解析に必要な試薬、などの購入に使用する。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Selective enhancing effect of early mitotic inhibitor 1 (Emi1) depletion on the sensitivity of doxorubicin or X-ray treatment in human cancer cells.2013
Author(s)
Shimizu N, Nakajima NI, Tsunematsu T, Ogawa I, Kawai H, Hirayama R, Fujimori A, Yamada A, Okayasu R, Ishimaru N, Takata T, Kudo Y.
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Journal Title
The Journal of Biological Chemistry
Volume: 288(24)
Pages: 17238-52.
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Invivo effect of multi-wall carbon nanotubes on immune system.,2013
Author(s)
Yamada Koichi, Akihiko Iwasa, Tomoyuki Kondo, Mie Kurosawa, Rieko Arakaki, Akiko Yamada, Yasusei Kudo, Y Taquahashi, A Takagi, J Kanno and Naozumi Ishimaru
Organizer
6th International Symposium on Nanotechnology,Occupational and Environmental system.,
Place of Presentation
名古屋国際会議場(愛知県)
Year and Date
20131028-20131031
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