2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24700006
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角谷 良彦 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (70376614)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 形式手法 / 量子計算 / プロトコル |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に、プロセス計算においては等価性の議論が重要である。中でも特に、双模倣と観察等価性は利用範囲も広く、よく研究されている等価性概念である。量子プロセス計算では、これまで適切な観察等価性の定義は知られていなかったが、本研究により、観察等価性を与えることが可能となった。量子プロセス計算の観察等価性は、量子物理学における観測と密接な関係がある。量子物理学においては、状態は観測を通じてしか知ることができず、観測で区別できないものは同一視される。本研究で提案した観察等価性も、量子物理学における観測による区別に準じたものとなっている。 等価性は、量子鍵配送プロトコルBB84の安全性証明においても利用されている。昨年度までの研究で、プロトコルを量子プロセス計算の中で形式化し、プロトコル同士の等価性を双模倣の枠組みで議論した。今年度の成果である観察等価性を用いても、その議論を行うことが可能となっている。その際、観察等価性はより物理学的直観に近いため、プロトコルの形式化の違いによる不一致を緩和することに成功している。 双模倣と観察等価性の関係は自明ではなく、お互いに包含関係にないということが本研究により明らかとなった。観察等価性はある種の妥当性を意味していると言えるため、既存の定義による双模倣は量子計算においては健全ではないという結論になる。ただし、双模倣は機械的な判定に優れており、病的な例以外では依然として有用である。このような不都合を解消するため、本研究では、観察等価性に基づいてプロセス計算を設計し直す手法についても考察した。期間内に研究を終えることはできなかったが、この手法を用いると、双模倣が観察等価性に包含されることが分かっている。
|
Research Products
(6 results)