2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上野 賢哉 京都大学, 白眉センター, 助教 (70586081)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 計算理論 / 線形計画法 / 論理関数 |
Research Abstract |
本研究では、アルゴリズム理論と計算量理論の双方に現れる劣加法構造に着目し、その構造的性質を探索していくことを目的として研究活動を推進してきた。これにより、算法と計算量という統合的な枠組みの中で計算理論に対する新たな潮流を創成することを目指している。 本年度の実績として、まず本研究計画の構想の根幹となる論文がTheoretical Computer Scienceに掲載された。この成果は、Karchmer, Kushilevitz, and Nisan (1995)により開発された線形計画法を利用した論理式サイズ下界の証明法を拡張することで多数決関数などの基本的な関数に対して下界値を改良するものである。Hrubes, Jukna, Kulikov, and Pudlak (2010)による研究で、この手法は加法的な構造を有し包括的な限界が存在することが論じられていた。これに対して、新たに掲載された論文成果において加法性を越える劣加法的な線形空間の探索手法を提案することができている。 他の成果に関しても以下で述べるように国内外の学会にて発表を行うことができた。超二次論理式サイズへ向けた候補となる論理関数に関して考察を与えた研究成果に関しては、電子情報通信学会のコンピュテーション研究会において発表を行った。3ビット多数決関数の合成から構成される論理式の複雑さに関して解析を行った研究成果に関しては、国際会議COCOON2012に採択され発表を行った。 これに加えて、種々ある劣加法性に関連する研究対象の中から非負階数に関する研究に焦点を絞りこみ、関連研究の調査を行った。特に、行列が0,1のみから構成される二進行列に対して解析を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の初年度では以下に述べるような計画を予定していた。初年度の計画においては、まず解析対象、特に論理関数について整理を行う。具体的に、大きい下界を示しうる論理関数の候補について解析し、とりまとめる。また、整数計画法に対する双対理論、エントロピー理論や測度論などの有用な道具について調査やその理論背景を深く理解し、適用可能性を探る足掛かりとする。この間、海外における一流の国際会議や国内における研究集会等に出向き、一線で活躍する研究者と交流を深めるとともに最先端の研究の情報収集に努める予定である。 研究実績の概要に記載した通り、劣加法構造探索に関する論文発表や今後の研究のための情報収集を遂行することができた。したがって、初年度は計画通りの研究活動を行うことができたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、研究実績の概要で述べた非負階数に対して特に焦点を当て研究を推進していく予定である。非負階数は、線形計画法の記述長の下界を与えるための尺度として注目を浴びている。通常の行列の階数と同様に劣加法的であるが、劣モジュラではないといった性質が知られている。このようなアルゴリズム理論的に見ると都合の悪い構造であるがゆえに、計算量理論的には大きい限界値を与える可能性を秘めている。実際に、非負階数の計算は一般にNP困難であることが知られているが、近似アルゴリズムなどの計算手法と同時に、その下界値を示すための手法も盛んに研究されている。 年次計画としては、当初の研究計画の通り以下のような計画に従い研究を推進していく予定であるが、計画班の研究分担者として参画している新学術領域(計算限界)プロジェクトとの連携により、研究の推進を加速させていく予定である。まず2年目である平成25年度の計画としては、初年度に準備してきた具体的道具を利用し、実際に劣加法構造の探索について深く解析していく。これらの成果をまとめ1つの論文とし国内の研究会ならびに国際会議へと投稿し発表を行う。また、発表を通して出てきた指摘や新たな課題・問題点を整理した上で、学術雑誌版へと論文を完成させ投稿する。最終年度の計画としては、論理関数だけにとどまらず、アルゴリズム理論全般に範囲を広げ、具体的な応用事例を構築するなどにより、劣加法構造という理論的な枠組みを通して、計算理論の新しい展開を目指す。前年度と同様にこれらの成果をまとめ、研究会・国際会議で発表し、学術雑誌版へと論文を完成させることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに整備してきた計算機環境や外部発表のためのノートPC及びソフトウェア環境を引き続き活用することができたため、本年度の計画において計上していたPC関連機器およびソフトウェアのための経費を次年度に繰り越すこととした。したがって、次年度においては、主として計算機とソフトウェアの購入ためにこの予算を使用する計画となっている。
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Research Products
(6 results)